リチャードソンジリスのアポクリン腺癌
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、リチャードソンジリスの皮膚腫瘍です。
体表部の汗腺が腫瘍化して発生するものにアポクリン腺の腫瘍があります。
アポクリン腺の腫瘍には良性のアポクリン腺腫と悪性のアポクリン腺癌があります。
腺腫と腺癌の鑑別は臨床的に困難です。
腺癌は一般的に境界不明瞭な腫瘤で、びまん性に皮膚に浸潤していきます。
ジリスの場合は皮膚のアポクリン腺が腫瘍化しますので、皮膚に結節上の腫瘤が多発的に生じることが多いです。
リチャードソンジリスのバニラ君(2歳8か月、雄、体重600g)は顔の側面あたりに腫瘤があるとのことで来院されました。
触診をしますと確かに5~6㎜の結節上の腫瘤が両顔面と耳の間に3個ずつ認められます。
まずはこの腫瘤を細胞診しました。
結果はアポクリン腺癌でした(下写真)。
さらに背部表層部に同じような結節性腫瘤が多数認められました。
こちらも細胞診して同じアポクリン腺癌である事が判明しました(下写真)。
腫瘍を皮膚ごと切除する外科的処置を選択させて頂きました。
下写真は麻酔導入箱に入っているバニラ君です。
麻酔導入がうまくできた所でガスマスクで維持麻酔に変えます。
下写真黄色丸の箇所が腫瘍です。
体の正中線に沿って多数集まっているのがお分かり頂けると思います。
もともと小さな体ですからある程度のマージン(腫瘍の縁取り)を取る必要があるのですが、限界があります。
縫合時に皮膚にテンション(緊張)がかかることを予想して切除を進めていきます。
背中の切除は終了です。
次は顔と耳の間の腫瘍を切除していきます。
背部が乾燥しないように生理食塩水で濡らします。
これから皮膚を縫合していきます。
ジリスは激しい動きもしますので、ステンレスワイヤーで縫合することにしました。
バニラ君、ちょっと痛々しい感じですが縫合は終了しました。
麻酔の覚醒は速やかで手術は無事終了です。
術後に食欲不振になって、腸蠕動が停滞すると困りますので強制給餌で流動食を与えます。
翌日のバニラ君です。
元気に退院して頂きました。
皮膚が完全に癒合するまで数週間は必要です。
バニラ君、それまで患部を齧ったりしないようお願いします!
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