爬虫類の脱水症状について
最近、特に栄養不良・脱水状態の爬虫類を診察することが多いです。
初めて爬虫類を飼育される飼主様に多いのですが、栄養状態や脱水症状の確認がよくわからないと質問を受けます。
本日は、全身の栄養状態が良くなく、脱水を起こしている2例についてコメントいたします。
まず1例目はエボシカメレオン君です。
食欲がなく水もしっかり飲めていないようで衰弱が著しいです。
立ち上がることも辛そうです。
黄色矢印で示しましたカメレオンで言う所の瞼のくぼみの部分にご注意ください。
この部分が著しく窪んでいるとそれは脱水を示します。
当院HPのカメレオンの疾病に登場する他のカメレオン君達と比較して頂けるとお分かりになると思います。
残念ながら、小型の爬虫類では点滴が出来ませんので、皮下輸液を実施します。
加えて動物性蛋白質を含んだ流動食を経口投与します。
次はフタアゴヒゲトカゲ君です。
先のエボシカメレオン君以上に全身状態が不良です。
体色も色あせています。
赤丸で示した瞼周辺の窪みが脱水の程度を表します。
瞼を開けることも辛そうです。
加えて全身の脱水状態です。
犬猫であれば背中の皮膚を真上方向に引っ張って、離してどれくらいの速さで皮膚が戻るかで脱水の状態を評価します。
爬虫類はその評価は難しく、むしろ皮膚の乾燥の状態や皮膚の弾力性(皮膚の突起物を含めた)・体色で評価しています。
下写真で赤矢印で示したように肋骨が浮き出るくらいに削痩しています。
高度の栄養不良です。
拒食のためお腹と背中が引っ付くくらいに細くなっています。
このように衰弱が著しくなりますと、先のカメレオン同様治療が難しくなります。
もともと変温動物である爬虫類は、哺乳類に比べて基礎代謝が緩やかです。
したがって、投薬をしても速攻で効くという印象は薄いです。
栄養状態が不良でも一挙に高度栄養不良に至るというよりは、じわじわと水面下で進行するタイプが多いようです。
またもうダメかなと思えるようなケースでも、1週間全くの絶食に耐える個体もいます。
まずは、餌の食いが悪いと感じたら必ず何が原因で拒食に至っているか確認が必要です。
そのまま様子を見ようとすると、今回のようにかなり厳しい状態に追い込まれてしまいます。
少食の爬虫類ほど病気がらみの拒食なのか、飼育環境の不備による拒食なのかを判別するのには苦労します。
ちょっとでも気になることがあれば、爬虫類を診ていただける獣医師にご相談ください。