こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、久々のヘビです。

ヘビは非常にデリケートな爬虫類で、特にウィルスや細菌感染により一挙に重篤な症状に陥ります。

実際、症状が確認出来て数日で死の転帰をたどる症例も多いです。

パプアンパイソンのメド君(雄、年齢不明、体重1.4㎏)は口内炎の疑いで来院されました。

パプアンパイソンはニシキヘビ科のパプアニシキヘビ属に分類されるヘビです。

ニューギニアやオーストラリアに棲息しています。

成体になると体重は22.5kg、全長は5mを超え、飼育許可の要らないヘビの中では最長とされてます。

そんなメド君ですが、食欲不振とのことでまずは口腔内の検査をさせて頂きました。

下写真の開口器を用いて口を開けます。

口の中に唾液が貯留しているのが分かります。

下写真で口腔内に貯留した白濁色の唾液(黄色矢印)が確認できます。

咽頭部の炎症も起こしているようです。

貯留唾液を綿棒でかき取ります。

かなりの粘稠性のある唾液です。

この唾液の中には、剥離した口腔粘膜上皮細胞と雑菌が一部認められました。

当初、口腔内の外傷などから発症するマウスロットを疑いました。

傷口と思われる部位がメド君の場合は見当たらず、マウスロットに特徴的なクリームからチーズ様の滲出物も認められませんでした。

マウスロットについて、興味のある方はこちら(ミドリニシキヘビのマウスロット)をクリックして下さい。

その一方で、下写真のように歯肉は腫脹して点状出血が認められます。

ヘビの全身性感染症の場合は、皮膚に点状出血が広範囲に出ることが多いです。

ヘビの全身性感染症(敗血症)については過去に記事を載せていますので、興味のある方はこちらをクリックして下さい。

下写真は歯肉部の拡大です。

広範囲に点状出血が確認できると思います。

今回のメド君のケースは、歯肉の点状出血にとどまっています。

皮膚に全身性に点状出血はありません。

マウスロットは、潰瘍性または壊死性の口内炎へと進行していきます。

口腔内に出来た滲出物が気道内に吸引されたり、嚥下されることで細菌性の肺炎・胃腸炎を引き起こすこともあります。

メド君は、マウスロットの初期症状と判断すべきか、あるいは細菌もしくはウィルス性の全身性感染症なのか、診断に悩まされました。

あるいは、パプアンパイソンという品種に特徴的な症状であるかもしれません。

爬虫類において明らかにされているウィルス感染症はまだごくわずかです。

その治療に対する報告例もほとんどありません。

ヘビの場合は、ヘルペスウィルス、パラミクソウィルス、レトロウィルスなどの感染症が知られています。

これらのウィルス感染症は個体によって、症状も様々で全く症状が出ないケースもあれば、短期間で死に至るケースもあります。

いずれにせよ、メド君はニューキノロン系の抗生剤を投薬して、支持療法により経過観察していきます。

メド君、頑張って治していきましょう。

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