今回、ご紹介しますのはカリフォルニアキングスネークです。
アメリカ西海岸に生息する無毒蛇ですが、蛇を捕食するという特徴のある蛇です。
蛇は総排泄腔と呼ばれる穴で排便・排尿さらに雌であれば産卵を済ませます。

この排泄腔から出血があり、その周辺部が腫れているとのことで来院されました。

総排泄腔よりも下流側に腫脹部があるため消化管の問題ではないと思い、まずはレントゲン撮影を行いました。
結果が下の写真になります。

蛇の全身のレントゲン写真はいつ見ても美しく感じます。

黄色の矢印で記した部分が腫脹している箇所であり、良く見ると何か白い塊のようなものが認められると思います。
実はこれはペニスで蛇の場合はヘミペニスと呼ばれる性器です。
ヘミペニスは排尿の機能を持たない交尾だけのために存在する一対の性器です。(2本あります)
ヘミペニスは表面に溝がありここから精液を流し込むつくりになっています。
また雌の性器に結合してから抜けないように表面に多数の突起物が出ています。

実はこのヘミペニスは体外に交尾時には突出していますが、何時間も交尾に時間をかけ終了すると体内に格納されます。
体外に突出している時に受傷することが案外多く、ペニスの付根から出血する場合もあります。
念のため、腫脹している部位を穿刺吸引したところ、膿は認められず血液が貯留していることが判明しました。

下の写真は吸引した血液をスライドガラスに塗沫し、染色したものです。
蛇を含め爬虫類の赤血球は核を持っており、独特な形状を示します。
この中には細菌を始め、これらを貪食する好中球・マクロファージ等は見当たりませんでした。
また腫瘍細胞も見当たりませんでした。

恐らくはヘミペニス受傷による出血・血腫形成と判断して止血剤の投与から始めました。
この経過はまた追ってお知らせします!

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