こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、犬の良性黒色腫です。

黒色腫はメラニン産生細胞由来の腫瘍です。

以前、犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)についてコメントしてありますので、興味のある方はこちらをクリックして下さい。

柴犬のシロップちゃん(8歳10か月齢、避妊済み)は外陰部に黒いイボが出てきたとの事で来院されました。

シロップちゃんは4年ほど前に緑内障を患って、その後両眼共に視力を失っています。

黒い腫瘤は少しづつ大きさが増大してきており、まずは細胞診を実施しました。

その結果として、メラノサイト腫瘍(黒色腫)が疑われるとの病理医からの診断でした。

メラノサイトはメラニン産生細胞を指します。

確認された細胞の細胞質内にはメラニン色素様の黒緑色顆粒が豊富に観察されました。

皮膚に発生する黒色腫はその多くは良性腫瘍であることが多いとされます。

今回、シロップちゃんに出来た黒色腫は外陰部周辺とのことで、本人も気にしている点と短期間に大きくなっている点から外科的切除を希望されました。

早速、全身麻酔を施します。

下写真黄色矢印は黒色腫を示します。

患部の剃毛します。

下写真黄色丸が外陰部に発生した黒色腫です。

拡大写真です。

これから黒色腫の摘出手術を実施します。

腫瘍の大きさは3×7×8㎜でした。

腫瘍の周辺に眼科用のメスで切開を加えます。

外陰部周囲は血管が密に走行していますので、それなりの出血があります。

電気メス(バイポーラ)で出血部位を止血しています。

腫瘍を摘出したところです。

摘出後の患部です。

バイポーラによる止血痕が認められます。

5‐0のナイロン糸で皮膚縫合を実施します。

縫合終了です。

麻酔から覚醒したシロップちゃんです。

摘出した腫瘍です。

拡大像です。

この腫瘍の病理所見です。

低倍像です。

茶褐色はメラニン色素です。

100倍率の病理像です。

この腫瘍は、細胞質にメラニン色素を多数有する細胞によって構成されていました。

メラニン色素を脱色する処置を行った後の病理像です。

100倍の倍率像です。

下写真は400倍の倍率像です。

良性・悪性の判定は腫瘍細胞の異型性や高倍率10視野当たりの分裂頻度(4個以上なら悪性)を参考にします。

今回の黒色腫は、腫瘍細胞がよく分化しており、異型性に乏しく分裂頻度が低いため、良性腫瘍との診断を病理医から受けました。

良性腫瘍であり、摘出後の予後は良好との病理医からの診断でした。

発生部位が問題でこのまま黒色腫の増大が進行すると、いざ摘出する時には外陰部をも切除する必要が出てきたかもしれません。

シロップちゃん、お疲れ様でした!

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