ウサギの梅毒
皆様は梅毒という病気をご存知でしょうか?
ヒトでは大昔からの代表的な性病に挙げられています。
一方、ウサギには、このヒト梅毒の病原体であるTreponema pallidumと類似したTreponema paraluiscuniculiによって起こるウサギ梅毒(ウサギスピロヘータ病)という疾患があります。
家畜や犬・猫にはない疾病だけに見過ごされがちな病気です。
ヒトにウサギから感染することはありません。
あくまでウサギの間での感染とお考えください。
このウサギ梅毒は交尾によって感染が成立します。
しかし、性的に成熟していない若年ウサギでも感染が起こります。
これは、母ウサギがすでに梅毒の感染を受けており、胎児の時に母子感染を受けたものです。
当院ではほとんどの罹患ウサギは母子感染による若齢ウサギです。
子ウサギの本症の発病は生後2.5~3.0カ月齢に集中するとされます。
症状は皮膚粘膜部である鼻孔周囲、口唇周囲、眼瞼周囲、包皮・陰唇、肛門に皮膚病変として現れます。
病変部には、潰瘍・びらん、水抱、紅斑、かさぶたが認められます。
特に鼻孔周囲の炎症が強ければ、頻繁にくしゃみをします。
以下の写真は、まだ生後3カ月齢の子ウサギですが、梅毒の感染を受け当院で治療中です。
鼻孔周囲と陰部のびらん・潰瘍が認められます。
治療法としては、クロラムフェニコールという抗生剤を数週間投薬します。
ヒトではペニシリンが特効薬とされていますが、ウサギのような草食獣ではペニシリンは腸内細菌にダメージをあたえることが多く、加えてクロストリジウムという芽胞菌を増殖させ、腸性毒血症を招くため投薬は禁忌です。
投薬により、皮膚病変が完治しても、さらにあと2週間は投薬を続けます。
これによって、さらに何年かのちに梅毒の再発を未然に防ぐことが出来ます。