ウサギの子宮内膜過形成(子宮内膜炎伴う)
雌のウサギでは、雌性生殖器疾患は日常的によく見られます。
これまでにもウサギの子宮腺癌、ウサギの子宮腺癌(その2)と書き込みましたが、4,5歳以降になると雌性生殖器疾患は多発します。
ほとんどの子宮疾患は、食欲不振を伴わないことが多く、そのため発見が遅くなる傾向があります。
多くは血尿が出るとの事で来院され、検査の結果、子宮疾患であると判明することが殆どです。
今回、ご紹介致しますのはネザーランドドワーフのココちゃん(2歳、1.8kg)です。
血尿が続くとのことで来院され、尿検査を実施したところ潜血反応陽性で、レントゲン検査、エコー検査共に子宮の腫大が認められました。
何らかの子宮疾患があることは明白です。
まだ若い個体なので、将来のことを考えると卵巣・子宮全摘出を実施された方が賢明と思い、また飼主様のご了解もいただきましたので手術を実施することとしました。
ウサギの場合、麻酔上の難しさもあり、当院ではICUの部屋に入ってもらい酸素化を行なってから、麻酔前投薬・導入・ガス麻酔と進めていきます。
開腹して子宮を確認したところ、子宮は腫大しており子宮内は出血して、暗赤色に変色している部分が認められました。
バイクランプで卵巣動静脈をシーリングしているところです。
下の写真は、摘出した子宮です。
バイクランプで主要な血管はシーリングしましたので、出血は最小限にとどめることが出来ました。
ココちゃんは術後の覚醒も速やかで問題ありませんでした。
術後はICUでしばらく入院してもらいます。
さて、摘出した子宮ですが子宮の内膜が炎症を起こしており、加えて内膜が嚢胞上に腫れていました(子宮内膜過形成)。
卵巣子宮摘出手術が適用となる生殖器疾患には、今回のような子宮内膜過形成の他に、子宮蓄膿症、子宮内膜静脈瘤、子宮水腫、子宮捻転、子宮腺癌などが挙げられます。
今回の子宮内膜過形成は、症状として排尿後の出血や間欠的な陰部からの出血、それに伴う貧血が主徴です。
食欲不振や元気消失が認められるようになると、かなり病状は悪化しているものと思って下さい。
血尿が数日でも続くのならば、病院を受診されることをお勧めします。
そして、毎回同じことの繰り返しになってしまいますが、早期の避妊手術をご考慮下さい。
ココちゃんは、2日間の入院後、元気に退院されました。
その後の血尿も認められません。