新米獣医師のつぶやき-part29-~抗生物質~
こんにちは、獣医師の苅谷です。
一日過ぎてしまいましたが、昨日は節分でしたね。
今年は豆まきこそはしませんでしたが、恵方巻を食べました。
恵方巻を食べていて毎回思いますが、一気に食べるのは結構きついですね。
だからこそ、縁起を担ぐことができるんだと思います。
今回は抗生物質についてお話しします。
まず抗生物質とは主に微生物が作る、他の微生物―生きている細胞の増殖や発育を阻止する物質のことを示します。
広い意味での抗生物質には細菌に効く抗菌薬、カビといった真菌に効く抗真菌薬、インフルエンザウイルスに効く抗ウイルス薬、癌治療に使用する抗がん剤があります。
一般的に抗生物質として病院で使われ、呼ばれているものは抗菌薬ですので、こちらに焦点を合わせてお話しします。
抗菌薬の対象となる微生物は細菌ですが、今回の抗菌薬にかかわる部分をお話しします。
動物の細胞と細菌ではいくつか違うところがあります。
その中でピックアップして説明していきます。
①の細胞壁は動物の細胞には存在しない構造で、細菌の他には植物の細胞などが持つ構造です。
これは細菌たちの骨格を支えるもので、この構造の構築の仕方により細菌を大きく二つに分けることができます。
②のリボソームは細菌が活動するうえで必要なタンパクを作る場所、いわゆる材料の生産工場と呼ばれるものです。
ここはどの生物でもリボソームがあり、そこでタンパクを作っていますがここでも細菌と動物の細胞では少しの差異があります。
③の細菌のDNAは動物の細胞のDNAとは異なり、核膜に覆われておらず、細胞質内にむき出しになっています。
④のプラスミドは細菌や酵母菌といったものがもっている環境の変化に対応するために役立つDNAを含む構造です。
この構造は本来の動物の細胞にはない構造です。
今回挙げたものは抗菌薬の効く所、または効かなくなる原因となる所です。
まずは抗菌薬が効く所からいきます。
①の場所に作用する薬は細胞壁を上手く作れなくすることにより、細菌が増えることを抑える、形を保たせないという結果をもたらします。
細胞壁で形を保っている細菌ほど、このタイプの薬が効きやすいです。
②の場所に作用する薬はDNAを新しくコピーすることを防ぐことで、細菌の増殖を抑え、退治する結果となります。
この種の薬の仲間には抗腫瘍性抗生物質―抗がん剤もあります。
③の場所に作用する薬はタンパクの生産工場をstopさせることで、細菌の活動を止めるたり、やっつけたりする働きをします。
細菌たちもただこれらの薬にやられているわけではありません。
ここで登場するのがプラスミドです。
環境の変化、つまり自分をやっつけにきた抗菌薬に対する対策をプラスミドによりとっていきます。
その方法は薬を分解したり、薬を外に排出する機構を身に着けたり、そもそも薬に反応しないように体を作り替えたりします。
細菌たちに耐性を持たせないためにはどうしたらよいか・・・
細菌に効く薬を短い期間で与え、対策を取られる前に一気にたたくことです。
抗生物質―抗菌薬がまだ残っているけど、体調がよくなってきているから残りを次回にまわそうと考えていると危ないです。
良くなってきている段階ではまだ細菌たちを殲滅できていない可能性があり、細菌たちの次回に備える期間を与えることになります。
この理由により処方された抗生物質は全部飲み切ってから判断する必要があります。
抗生物質にも種類に限りがあります。
だから薬剤耐性細菌を作らないようにすることが重要です。
まだまだ寒い時期が続きますが、風邪を引かないように気を付けてくださいね。
少し去年旅行にいった南国の海が恋しいです。
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