新米獣医師カーリーのつぶやき-part47-~慢性疾患セミナーに行ってきました~
こんにちは、獣医師の苅谷です。
先日開催された慢性疾患のセミナーに参加するために大阪に行ってきたのですが・・・
大阪ではエスカレーターに乗る時、左側を空けるようですね。
東海含め日本の大部分ではエスカレーターでは右側を空けますが、世界的には左側を空けるそうですね。
この習慣のルーツはイギリスのロンドンで急いでいる方々のために左側を空けるように鉄道会社がアナウンスしたことに由来するそうです。
日本では大阪で初めてこの習慣が取り入れられたそうです。
ただ日本では車が左側走行することから日本の大部分では右側を空けるようになったそうです。
ただ現在ではエスカレーターでの歩行はつまずきやすく、危険なため、現在ではエスカレーターでの歩行を禁止する流れになっているそうです。
では、今回は大阪で開催された慢性疾患セミナーについてお話しします。
今回慢性疾患として話題に挙がったのは、猫の慢性腎臓病、犬の僧帽弁閉鎖不全症、高齢動物における関節疾患の疼痛管理でした。
猫の慢性腎臓病については以前のブログにてお話しさせていただきました。
今回はこの中の犬の僧帽弁閉鎖不全症(MR)についてお話しします。
犬のMRは高齢犬(特に小型犬)のにおいて多く認められる循環器(心臓)の病気です。
まず僧帽弁というものは心臓の左側の部屋の左心房と左心室を分ける弁です。
心臓が収縮して血液を送り出す際に左心室から左心房への血液の逆流を防いでいます。
高齢になってくるとこの僧帽弁が上手く閉じることができなくなり、正常ならばほとんど起こることのない左心室から左心房への血液の逆流が出現してきます。
血液の逆流する量が増えてくるとその分の体全身に送り出す血液量が不足してくるため、代わりに心臓が送り出す回数、送り出す力を強くし、足りない部分を補います。
ただ血液の逆流がある状態で代償的に心臓が頑張っていると逆流する量もさらに増えてゆき、心臓も血液を体全身に回すため更に頑張ってしまいます。
このような悪循環を続けていると心臓はどんどんと大きくなってゆき、左心房への血液の逆流は多くなり、最終的には心臓がうまく機能しなくなります。
また心臓が大きくなってくると気管を圧迫するため、空咳をするようになったり、最悪の場合、肺に水が溜まってしまう肺水腫の状態になってしまいます。
初期症状としては空咳や疲れやすくなる、呼吸が荒い、食欲が落ちてくるなどあります。
このMRというものは完全に治すには手術をして僧帽弁そのものを治してあげる以外には方法はなく、心臓が悪い子に手術を行うのにはかなりの危険が伴い、手術を行える先生も極わずかです。
そのため、多くは薬で心臓の負担を取ってゆき、呼吸を楽にしてあげたり、空咳を減らしてあげたりします。
まず初期状態で治療を始めれば血圧を下げる薬のみで対応できますが、やはりそれでも症状を抑えることができなくなってくると、心不全になりかけていれば強心剤を増やしたり、肺水腫になっているのであればその水を抜く薬を増やしたりしていきます。
薬での治療はどうしても症状を抑えて、過ごしやすくすることを目的としているため、生涯この病気と付き合っていく必要があります。
この病気になって治療をしていても徐々に進行し、明らかな症状が出てくる状態(心不全、肺水腫)になるまでわかりにくいこともあります。
そのため定期検診を受けていただくのも必要ですが、それだけでは補えない部分もあるため、ご自宅での安静時の様子の観察も必要です。
空咳の回数とその音に加えて、口を開けて、舌の色が悪くなっていないか、歯茎を押して2秒以内に白色からピンク色に戻るか、安静時もしくは睡眠時に呼吸回数が40回を超えていないかを観察してもらいたいです。
呼吸回数は1分間当たりの呼吸した回数で犬の場合ですと10~30回/分となります。
測定方法は落ち着いているときに胸の上下の動きでカウントしてゆき、1分間の上下運動の回数をカウントします。
もし時間がないようでしたら30秒カウントして、回数を2倍にするといった感じで呼吸回数をみます。
この病気は生涯付き合っていく必要のある日常生活に関わる病気です。
日常生活の大部分を過ごしているご自宅での日々の観察が重要となってくる病気です。
そのため、今回挙げた項目を観察していただければ、わんちゃんたちも過ごしやすくなると思いますのでご協力を鎧くお願いします。
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