こんにちは、獣医師の苅谷です。

現在梅雨のシーズン真っ只中で洗濯物が大変な時期ですね。

今回は前回の続きで貧血において赤血球があまり再生していない非再生のものについてお話しします。

まず非再生性貧血には大きく分けると2つに分けられます。

一つが赤血球の成熟障害です。

もう一つは骨髄の再生不良によるものです。

赤血球の成熟障害には栄養欠乏、臓器障害、慢性疾患、感染症が挙げられます。

始めに栄養欠乏によるものについてお話しします。

どのような栄養素が欠乏すると起こってくるのかというと葉酸やコバラミン、鉄が欠乏してくると起こります。

葉酸やコバラミンはいわゆるビタミンB群に含まれるものでこれらが欠乏してくると巨赤血球性貧血になります。

葉酸やコバラミンは体の中でDNAの合成に関わっており、これらが欠乏してくるとDNA合成障害が出てきます。

赤血球の元となる細胞がDNA合成障害に陥ると赤血球としての機能を発揮できない状態のままになってしまうため、貧血の状態に陥ります。

前回お話しした赤血球恒数から赤血球の状態を分類すると大球性正色素性に分類されます。

鉄の欠乏で起こる鉄欠乏性貧血です。

鉄が欠乏すると赤血球の色の成分であるヘモグロビンが作れなくなります。

このヘモグロビンが少なくなると赤血球の仕事の一つである酸素の運搬ができない状態になり、貧血となります。

鉄が欠乏してしまう原因としては鉄の摂取量が足りない、消化管での吸収障害がある、慢性的な出血があるといったことがあります。

この貧血の場合、小球性低色素性に分類され、通常よりも薄っぺらい赤血球が認められるようになります。

次に臓器障害によるものについてお話しします。

こちらでよく認められるものは腎不全に伴う腎性貧血です。

なぜ腎臓が貧血に関わるのかというと・・・

腎臓では赤血球の分化を指示するエリスロポイエチンと呼ばれるホルモンを作っています。

腎不全に陥るとこのエリスロポイエチンを作れなくなってしまい、貧血になっていきます。

この貧血の場合、エリスロポイエチンの欠乏は赤血球の形態には直接的には影響を与えないため、正球性正色素性に分類されます。

次の慢性疾患にて起こる貧血です。

慢性的に体内で炎症(ひどい歯周病や腫瘍)、代謝障害があるとマクロファージやリンパ球といった免疫細胞が活性化され、サイトカインと呼ばれるものを分泌し続けます。

このサイトカインの中には赤血球を造血を阻害したり、体内の鉄分の利用機能を抑えたり、赤血球の寿命を短くしたりするものもあります。

これにより貧血が起こり、犬や猫で認められやすい貧血の一つです。

この貧血ではその病態により正球性正色素性または低球性低色素性に分類されます。

感染症には猫白血病や猫エイズ、猫伝染性腹膜炎、エールリヒア症、リーシュマニア症があります。

こちらの感染症は前回再生性貧血で挙げた感染症のように直接赤血球を壊さず、白血球に影響を与えるため、慢性疾患におけるようなサイトカインによっての影響にて起こるものと考えられます。

最後に骨髄の再生不良によるものです。

再生不良性貧血とも呼び、非再生性貧血と呼び方がごちゃごちゃになりやすいため注意が必要です。

この二つは別々のものではなく、非再生性貧血の中の一つに再生不良性貧血が含まれるということです。

この骨髄の再生不良が起こると骨髄で作られる白血球、赤血球、血小板の大元となる多能性幹細胞が障害を受けています。

そのため骨髄低形成が生じ、汎血球減少症(白血球、赤血球、血小板が少なくなる)が起こるため、貧血になります。

原因としては化学物質(抗がん剤、重金属など)、自己免疫疾患、放射線、骨髄ろうといったものが挙げられます。

これは骨髄が化学物質などで直接ダメージを受ける、または前回挙げた再生性貧血にて骨髄での赤血球といった血球成分の大量造血により骨髄が疲弊してしまい骨髄ろうに陥ることで起こります。

この場合には、末梢血液中に出てきている赤血球は正常なものが多いため、正球性正色素性に分類されることが多いです。

前回の赤血球恒数の話から貧血の種類の話をしましたが、これだけでは疾患の特定をすることは難しいです。

そのため追加の検査(血液塗抹や感染症ならば遺伝子検査、鉄に関わるところならば鉄の量、それぞれの疾患に特有の検査など)をする必要があります。

最後の再生不良性貧血となってくると末梢の血液の検査だけではなく、骨髄の検査まで必要となってきます。

肉眼の見ることのできないレベルでのお話しになってくると検査、検査と多くなってきますが、原因がわかれば対応できるものもありますね。

今回は以上で終わります。

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