こんにちは、獣医師の苅谷です。

台風や秋雨前線、季節の変わり目で体調を崩しやすいですね。

そんな中風邪をひくと長引いて辛いですので、気を付けてください。

今回は前回の続きをお話します。

まずマラセチア性皮膚炎についてです。

マラセチア性皮膚炎は別名で脂漏性皮膚炎とも呼びます。

マラセチアとは真菌、いわゆるカビの仲間で前回出てきたブドウ球菌と同じく皮膚に常在する真菌です。

この菌を染色してみてみるとボーリングのピンみたいな形で観察できます。

この菌は皮膚の皮脂を栄養源として増殖していきます。

皮脂の量が問題なければ、皮膚に対して影響はないのですが、過剰な皮脂により過剰にマラセチアが増殖すると皮膚炎や皮膚が過敏に反応するようになります。

マラセチアが過剰に増殖してくると皮膚はべたつきがひどくなり、痒みや発赤、ひどい場合には臭いがきつくなります。

症状の出やすい場所は皮脂のたまりやすい耳や腋の下、顔の皺、指の間、顎の下などが挙げられます。

症状が慢性化してくると皮膚が黒くなってきたり、苔が生えたような苔癬化したり、脱毛したりします。

治療は一番は適切なシャンプーによるスキンケアです。

過剰な皮脂が問題となっていると躍起になって皮脂を落とそうとする方もいますが、皮脂を落としすぎると逆に皮膚のバリアが薄くなってしまい、より過剰に皮脂が産生されるようになったり、膿皮症になったりします。

そのため適度な皮脂を落とすためのシャンプー選び、回数、保湿といった事柄が重要となってきます。

またマラセチア性皮膚炎は皮膚を過敏にすることから後々お話しするアトピー性皮膚炎の増悪因子ともなります。

そこで次はアトピー性皮膚炎についての話になります。

まずここで似たような病名でアレルギー性皮膚炎とアトピー性皮膚炎がありますね。

そもそもこの二つは大本はアレルギー性疾患に含まれます。

ここで話が少しそれますが、アレルギーは体を守るための免疫応答の一つで4つのタイプがあります。

その中で皮膚のアレルギーに関わるのはⅠ型とⅣ型です。

Ⅰ型はIgEという抗体と肥満細胞が関わる免疫応答です。

抗原となるアレルギー物質が体に入ってくると抗原と抗体であるIgEと肥満細胞が反応してヒスタミンと呼ばれる物質が分泌され、即座に痒みが現れます。

一方、Ⅳ型はマクロファージといった白血球が関わる免疫応答です。

抗原と白血球の一つのT細胞が反応し、マクロファージやその他の炎症を引き起こす物質を分泌し、周囲の組織傷害を起こし、少し時間がたってから痒みが現れます。

皮膚の痒みにはこのどちらかかもしくは両方関わってきます。

では話を戻して、アレルギー性皮膚炎とアトピー性皮膚炎の違いは何なのかですが・・・

アレルギー性皮膚炎の場合、アレルゲンとなるものに直接皮膚が接触して痒みを伴う湿疹が出てくる、原因が特定できるものです。

例えば、金属や草むらに触れた後に痒み、湿疹が出る接触性皮膚炎や蚊やノミなどに吸血された後に起こる皮膚炎などが挙げられます。

一方、アトピー性皮膚炎はどうなのかというと・・・

環境中や食餌内のアレルゲンが関与していることはもちろんのこと、皮膚のバリア機能の異常、ストレスといった様々な要因が複雑に絡み合って引き起こされる皮膚炎です。

アトピー性皮膚炎の場合、遺伝的に皮膚の保湿成分の産生能力の低下、皮膚の細胞間の脂質の減少などによって、皮膚が乾燥しやすい状態にあります。

この状態だと皮膚のバリア機能が低下しているため、外部からの刺激を受ける機会が増大します。

そのため刺激の原因を取り除こうと体は免疫反応を起こし、皮膚バリアが正常に機能している場合に比べて、IgE抗体がより作られやすくなります。

そのため、アトピー性皮膚炎を持っている場合、体内のIgE抗体は多く存在しており、アレルギー物質との接触により、より痒みができやすくなります。

つまりアトピー持ちの場合、敏感肌であるともいえます。

またアトピー性皮膚炎では皮膚の細菌叢もバランスを崩していることが多いですが、腸内細菌叢も安定していないこともあります。

腸内は体の中でも1番外部との接触が多く、免疫応答が活発な部位であるため、この腸内細菌叢が乱れると皮膚の免疫応答にも影響があるのではないかという説も唱えられています。

このようにアトピー性皮膚炎のメカニズムに関してはまだ完全に解明されていない部分が多いため、完全に治すことは難しく、上手く付き合っていくこととなります。

基本的に一番はスキンケアにて皮膚のバリアの状態をよくすることです。

保湿効果のあるものや抗炎症効果の高いシャンプーにて維持していきます。

次にアトピー性皮膚炎にて二次的に起こりやすい膿皮症やマラセチア性皮膚炎の対策です。

状況に応じて抗菌ないし抗真菌薬の内服またはこれらの成分を含んだシャンプーにて洗浄していき、同時に上記のスキンケアも行います。

内服を使用する場合は痒みとの兼ね合いにて薬剤耐性菌を気にかけ治療していきます。

最後に炎症つまり激しい痒みの管理です。

局所であるのならば外用のスプレー等で対応できますが、全身となると内服が必要となってきます。

内服の薬も何種類かあります。

一つはステイロイドです。

痒み止めとしては即効性があり、使い勝手は良いのですが、体への副作用もあるため、その使用方法には注意が必要です。

次に挙げるものが免疫抑制剤です。

ステロイドに比べ、副作用が少ないのですが、薬として効き始めるまで数週間かかり、薬自体も高価です。

そんな中最近新しいタイプの出てきました。

上記の二つは痒みに関わる関係なく炎症を抑えることで痒みを抑えてきましたが、新しいタイプのものは痒みに関わる部分を抑えることで痒みを抑えます。

これはステロイドのように即効性があり、抑えるターゲットが限定されているため、副作用も少ないとされています。

しかし、こちらも薬自体が高価であることと出たばかりであるため、慎重に選んでいく必要があると思います。

また人の花粉症などでもありますが、減感作療法も痒みを抑えるうえでは治療の一つになります。

これに関してはかなり前にお話ししたと思います。

以上で皮膚の痒みに関しては終わります。

皮膚の痒みであると原因を取り除いて、それで終わりという場合もありますが、アトピー性皮膚炎など繰り返し痒くなり、一生付き合っていかなければならないこともあります。

飲み薬で持っていくこともありますが、どうしても副作用や薬剤耐性菌の心配もあります。

皮膚の問題はできるだけシャンプーや外用薬でよい状態に持っていければと思います。

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