こんにちは 院長の伊藤です。

蒸し暑い日が続きますが、当院ではすでに熱中症の患者さんも来院されるようになりました。

涼しい環境でペットのお世話をしていただくようご注意下さい。

さて本日ご紹介しますのは、ラットの紅い涙です。

キリスト像の血の涙でもあるまいし、宗教的な話題でもありません。

ファンシーラットのぽっけちゃん(雌、8か月)は眼から紅い涙を流しているとのことで来院されました。

診る限り眼球や瞼の外傷は見当たりません。

下写真黄色丸が赤い涙が流れた後です。

眼球を洗浄しました。

瞼周辺の紅いものも一緒に拭き取ってみます。

一見すると血液の様に思えますが、実はこれはラットによく現れるポルフィリンの涙です。

ぽっけちゃんは眼の周辺を洗浄すると特に問題はありません。

ポルフィリンとは有機化合物でピロールが4つ組み合わさって出来た環状構造を持つ物質です。

古代から使用されてきた貝紫(ポルフィラ)がその名の由来とされてます。

このポルフィリンはハーダー氏腺(涙腺と同様に存在する眼の分泌腺)から分泌されます。

正確には、このポルフィリンはhematoporphyrinという誘導体で光と反応して赤色を発する特性があります。

hematoporphyrin誘導体は現在、腫瘍に対する光線力学療法に用いられてます。

この誘導体は腫瘍細胞によく吸収される性質があり、光を当てることで活性化して腫瘍細胞を殺傷する効果が認められてます。

一般的には、ラットはストレスが溜まると紅い涙を流すとされます。

ストレス時にハーダー氏腺からのポルフィリン分泌量が増えるようです。

下は、ポッケちゃんに次いで同じく赤い涙で来院されたおこめちゃん(雌、10か月)です。

黄色丸の箇所は同じく赤い涙の流れた跡が分かります。

ポルフィリンはウサギでも尿中に排泄されて赤色尿・血尿と間違われることがあります。

ラットの場合は分泌されるのがハーダー氏腺という眼の分泌腺にため、血の涙もしくは鼻涙管を通じて鼻血という形で気づかれることが多いです。

いずれにしても、疾病ではありませんのでご心配なく!

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