獣医師中嶋のコラム ~手術中の麻酔管理 (第1回)~
初めまして、獣医師の中嶋です。
今回が私のブログ初投稿になります。
これからよろしくお願い致します。
厳しい暑さが続いていますが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?
今回から数回に分けて、私が興味を持っている分野「麻酔」に関して、麻酔の必要性、実際にどのようにして行っているかを、お話しさせていただきます。
まず、
麻酔はなぜ必要?
動物たちは、動かず、大人しくしているのが苦手です。
人間は歯の処置中や、CT検査、MRI検査、内視鏡検査、局所の手術であれば、じっとしていれば全身麻酔をかける必要はありません。
しかし、動物はこれらの検査や局所の手術であっても、体を動かしてしまうので、全身麻酔が必要なケースが多数あります。
これが、お腹を開けての手術や、骨折などの大きな痛みを伴う手術であれば、なおさら全身麻酔が必要になります。
麻酔の目的
・意識消失
意識のある状態で手術を行ってしまっては、動物に大きな恐怖を与えてしまいます。
皆さんも寝ている間に手術が終わってほしいですよね?
・鎮痛
手術を行う際には、体にメス等で切開を加えるので、どうしても痛みが伴います。
鎮痛薬を使って、痛みをコントロールします。
・不動化
手術中は意識がなくなるので、動物は自分の意思で動くことはありませんが、自分の意思とは別に、刺激による反射で体が動くことがあります。
手術中に身体が動いてしまうと、とても危険なので、麻酔によって反射を抑えます。
麻酔は、意識の消失、鎮痛、不動化を行い、安全に手術を行うために必須の処置です。
麻酔が深くなると、
意識の消失
鎮痛 ⇒ これらの作用が強くなり、手術がしやすくなる
不動化
しかし、
心拍低下
血圧低下 ⇒ 生命活動に必要な反応も低下する
呼吸抑制
そのため、手術は生命活動に必要な反応を低下させずに、なおかつ、手術を行い易く、痛みや恐怖を感じさせないように麻酔の深さを逐一調節しています。
あまりにも、心拍、血圧などが低くなってしまう場合は、お薬を使って補助をしていきます。
先ほど、麻酔で呼吸が抑制されると言いましたが、ワンちゃん、ネコちゃんにおいては、全身麻酔の時に呼吸を止めて人工呼吸に切り替えます。
なぜなら、自身で行う呼吸(自発呼吸)よりも体の動きが少なく、なおかつ呼吸をコントロールできるので、必要十分量の酸素、麻酔を動物に送ることができるからです。
次回は、この麻酔中の呼吸について詳しくお話しします。
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