こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、ラットの脂腺癌の症例です。

ラットはいろんなタイプの腫瘍に罹患します。

遺伝的に発症する腫瘍もあれば、突発的に発症する症例もありますが、ラット自体腫瘍の多い動物種であるという感があります。

ラットのたろ君(雄、2歳5か月齢、体重470g)は右臀部の腫瘤が次第に大きくなってきたとのことで来院されました。

患部の腫瘤は直径が約3㎝ほどあります。

ラットの体格からすれば、かなり大きな腫瘤と思われます。

短期間で腫大した腫瘤であることと、膿瘍で無い点から腫瘍の可能性を考えました。

飼い主様のご要望もあり、腫瘍摘出手術の実施となりました。

いつも通りの麻酔導入箱に入ってもらい、イソフルランを流します。

麻酔導入は速やかに完了しました。

外に出てもらい、患部を剃毛します。

被毛に隠れて見えずらかったのですが、下写真黄色矢印が今回の腫瘤です。

拡大した写真です。

触診では、患部と周囲組織(特に筋肉層)との固着はなさそうです。

早速、腫瘤の麓にあたる部位から外周にかけて硬性メスを入れて行きます。

薄い被膜につつまれた腫瘤が現れました。

周囲組織からの血管浸潤があり、電気メス(バイポーラ)で止血と切開を繰り返して腫瘤を剥離します。

腫瘤に向けて栄養血管(黄色矢印)が走行しています。

止血は完了して、皮膚と腫瘤をまとめて摘出します。

これで摘出は終了です。

腫瘤摘出後の患部です。

皮膚をナイロン糸で縫合します。

縫合完了です。

全身麻酔から覚醒したたろ君です。

摘出した腫瘤です。

この腫瘤にメスで切開を入れます。

腫瘤内部は脂肪と赤血球に富んでおり、多結節状の腫瘤で形成されたに肉芽様組織です。

この腫瘤を病理検査に出しました。

下写真は中等度の倍率です。

シート状に多形細胞(類円形、短紡錘形)が増殖しています。

高倍率の像です。

多形細胞(腫瘍細胞)の一部は、細胞質が泡沫状を呈して、脂腺細胞への分化を呈しています。

病理学的な診断は、脂腺癌とのことです。

今回の腫瘍細胞は、核分裂像が多数認められる点、大小不同を示す点、明瞭な核小体を有する点などから悪性度の高い腫瘍であるとのことです。

たろ君は今後、要経過観察が必要です。

たろ君、お疲れ様でした!

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