ジャンガリアンハムスターの乳腺癌
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介するのはジャンガリアンハムスターの乳腺癌です。
ジャンガアンハムスターの腫瘍の発生率は高く、その中でも乳腺腫瘍は40%以上が悪性腫瘍であり、雌雄に限らず発生するとの報告があります。
ジャンガリアンハムスターのぐりちゃん(雌、7か月齢)は左胸部に大きな腫瘤があるとのことで来院されました。
下写真の黄色丸及び黄色矢印は胸部の腫瘤を示します。
患部を細胞診したところ、乳腺腫瘍の可能性が認められました。
飼い主様の了解のもと、乳腺腫瘍摘出手術を行うことになりました。
ぐりちゃんをイソフルランで麻酔導入を行います。
次いで、維持麻酔に変えて患部を剃毛します。
患部の消毒をします。
横からのアングルでこの腫瘍の大きさがお分かり頂けると思います。
患部を皮膚ごと摘出できると良いのですが、そうすると皮膚欠損領域が極めて大きくなります。
結果として、縫合時に強くテンションを掛けなくてはなりません。
左前足の挙動は制限され、ぐりちゃんは患部を気にして縫合部を齧り、吻開することになります。
今回は、皮膚を電気メス(モノポーラ)で切開して、腫瘍をバイポーラで摘出する方法を選択しました。
モノポーラで皮膚切開を進めて行きます。
腫瘍が顔を覗かせています。
患部は乳腺そのものなので、血管に富んでおり出血は比較的多いです。
皮膚から乳腺を優しく剥離する感覚で進めます。
特に腫瘍組織自体は豆腐の様に脆弱であるため、取り扱いは慎重に行います。
ピンセットで腫瘍を抑え込み、気持ち牽引しながらバイポーラにより腫瘍を摘出します。
黄色矢印は、乳腺に分布する太い血管です。
バイポーラでこれらの太い血管を止血・離断します。
患部を摘出しました。
腫瘍摘出後の胸部です。
取り残しの腫瘍組織がないか確認します。
切除した皮膚及び皮下組織から静脈性の少量の出血があり、バイポーラで止血します。
皮膚を5-0ナイロン糸で縫合します。
縫合が終了しました。
イソフルランを切り、酸素吸入しながら覚醒を待ちます。
リンゲル液を皮下輸液します。
無事、全身麻酔から覚醒したぐりちゃんです。
摘出した乳腺です。
病理検査の結果です。
下写真は低倍率像です。
今回の腫瘤は皮下組織の乳腺小葉内において、軽度に異型性を示す腺上皮性腫瘍細胞の腺腔状・乳頭状・嚢胞状の増殖巣から構成されています。
高倍率像です。
腫瘍細胞の多くに核分裂像が認められ、腫瘍細胞の脈管浸潤像は認められません。
今回の腫瘍細胞群は、分化度が高く、悪性度は低いと考えられるとの病理医の診断でした。
術後3週間のぐりちゃんです。
抜糸のために来院して頂きました。
抜糸後の患部は綺麗に皮膚は癒合しています。
今後は他の乳腺の状態を経過観察していく予定です。
ぐりちゃん、お疲れ様でした!
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