こんにちは、獣医師の竹内です。

私は大学生だった頃、一人暮らしが寂しくてジャンガリアンハムスターをお迎えして一緒に暮らしていました。

アクロバティックな性格で、いつもケージによじ登ってうんていをしたり、

ひたすらケージの柵をガジガジ噛んだりする子でした。

(よじ登るのもケージを齧るのも、怪我や不正咬合の原因になり得ますので、注意してくださいね)

当院にはたくさんのハムスターが患者さんとして来院されますが、

ジャンガリアンハムスターを見ると昔飼っていた子を思い出し、懐かしい気持ちになります。

今回は、ジャンガリアンハムスターの肝嚢胞疑いの症例をご紹介いたします。

ジャンガリアンハムスターのみるちゃん(体重61 g、雌、2歳)は、

最近お腹が膨らんできてお腹を気にしている、とのことで来院されました。

みるちゃんのお腹はぽっこりと膨らんでいます。

ライトをお腹に当てると、水風船にライトを当てた時のような透過性が見られ、

腹水が溜まっている可能性が考えられました。

お腹の中で何が起こっているのかを調べるために、レントゲン検査を実施しました。

上写真はみるちゃんのレントゲン画像です。お腹がぽっこりと膨らんでいます。

↓下写真は他のお腹が膨らんでいないジャンガリアンハムスターのレントゲン画像です。

みるちゃんと比べると、お腹の丸みの様子が異なります。

また、超音波検査も実施しました。下写真はみるちゃんの超音波検査の画像です。

超音波検査では、液体は黒く写ります。みるちゃんの肝臓は大きく腫れ上がり、

液体を含んだ袋(嚢胞)が多数認められました。

お腹がぽっこりと膨らんでいる原因は、大きく腫れた肝臓でした。

上写真は犬の画像ですが、正常な肝臓の超音波検査画像です。

正常な肝臓では、みるちゃんで認められたような嚢胞は確認されません。

検査結果より、みるちゃんは肝嚢胞疑いと診断しました。

肝嚢胞は、肝臓の中に嚢胞ができた状態のことです。犬では、肝嚢胞が

形成される疾患として先天性嚢胞性疾患や孤立性嚢胞、腫瘍、肝膿瘍があります。

肝嚢胞は大きくなると、みるちゃんのようにお腹の大半を占めることもあり、

腹部膨満や圧迫による呼吸困難を示す子もいます。症状の重い子ではお腹から細い針を穿刺して、

中に溜まった液体を吸引することもありますが、再度液体が貯留することが多いようです。

みるちゃんは元気や食欲があり、呼吸状態も問題なかったため穿刺は実施せず、

強肝剤と抗生剤を処方して経過を見守ることとしました。途中、利尿剤を使用して

一時的に腹部膨満の症状が少し改善したこともありましたが、再度大きくなりました。

みるちゃんはお腹が膨れてから3ヶ月間、治療を続けてくれました。

もし、ハムスターを飼われていて最近お腹が膨れてきたな、と感じられる方が

居られましたら、肝嚢胞や他疾患の可能性が考えられますので、

ぜひお早めに動物病院の受診をお勧めいたします。



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