新米獣医師カーリーのつぶやき-part48-~肝臓に関わる検査②~
こんにちは、獣医師の苅谷です。
秋雨前線の影響でしばらく天気がすぐれないですね。
少し前の蒸し暑さに比べれば、幾分かは涼しくはなりましたが、天候の変化で体調を崩すこともあるので注意が必要ですね。
ただ夏ももう終わったのかと感じさせられる今日この頃です。
今回は前々回の肝臓に関わる検査の残りをお話しします。
前々回での血液検査の結果にて肝臓に問題があり、詳しく診るとなった場合・・・
次に挙げられる検査はX線検査や超音波検査などの画像によるものです。
X線検査では肝臓の大きさや形、腫瘍の有無、胆のう内の結石の有無といった肝臓周りの状態を確認していきます。
肝臓が大きくなっているとすれば、肝炎になっていたり、肝臓に脂肪が過剰に脂肪がついていたり、腫瘍があったりすることが考えられます。
逆に小さくなっていると門脈シャントといった病気が疑われます。
本来小腸で吸収した栄養素を含む物質は門脈という血管により肝臓に運ばれます。
しかし、門脈シャントの場合、肝臓に行く通常の門脈のルートの他に、後大静脈といった心臓に還っていく静脈に違うルートを作ってしまいます。
この状態だと本来肝臓に行くはずだった血液量は減少し、肝臓で行われるはずだった栄養素の貯蓄や有害物質の解毒等が行われにくくなり、肝臓は小さくなっていってしまう状態です。
次に超音波検査についてです。
超音波検査ではX線検査よりも細かい部分を診ていきます。
こちらではX線検査ではわからない血管の走行やその異常、袋状の構造物(胆のうなど)の状態(胆泥、胆石の有無、形大きさ、壁の厚さ)、画像への描出の度合いの違いから脂肪や水が溜まっているのか、炎症があるのかを診ていきます。
腹部はいろいろな臓器があり、X線検査のみでは判別できないことがあるため、その部分を超音波検査で補っていきます。
画像診断で最終的に使用されるものがCTといった検査です。
この場合、肝腫瘍や門脈シャントの手術といった正確にその位置や大きさを把握する際に使用します。
CTの場合だと、X線検査や超音波検査と違い、臓器の構造を平面ではなく、立体的に再構成して確認できるため、十分に異常な部分を確認することができます。
画像診断は以上で終わり、次は肝生検についてお話しします。
肝生検は肝臓の細胞(組織)や腫瘍を採取し、染色し顕微鏡下で肝臓がどんな状態か、またどんなタイプの腫瘍かを診る検査です。
肝生検を行う方法としては①超音波検査で針を用いて肝臓の細胞をとってくる方法、②腹腔鏡を使い、肝臓の細胞をとってくる方法、③試験的開腹を行い、肝臓の一部をとってくる方法の三つがあります。
体への負担としては①②③の順で大きくなりますが、その分肝臓の組織をとってくるという確実性の部分では③②①の順番になります。
また肝生検は血管に富む肝臓の一部を採取するため、しっかりと血液が止まることを検査したうえで行うことと、検査中に動いてしまうと大きな血管を傷つけてしまう危険性があるため、麻酔下で行う必要があります。
肝生検により原因は確実に特定することが可能ですが、その分リスクを伴うため、行う際は状態の見極めが重要です。
最後にその他の腹水の検査や尿検査です。
腹水の検査では、腹水の中に細胞があるか、またどんな細胞かや腹水の比重といったことよりお腹の中の臓器に炎症があるのか、肝臓の機能が落ちてきてタンパク質が作れなくなり、血管から水分が漏れてきているのかを確認します。
尿検査では黄疸の原因となるビリルビンが尿中にたくさん出てきたり、肝臓病の原因によっては結晶がでてくる可能性があります。
以上が肝臓に関する検査です。
肝臓病は血液検査にて見つけていきますが、その補助として今回挙げたような画像検査やそのほかの検査を行っていきます。
4回に渡り肝臓についてお話ししましたが、やはり沈黙の臓器と呼ばれるだけあって、症状が出てくる頃には肝臓はかなり悪い状態になっています。
その兆候は血液検査にも出てくるため、血液検査を定期的に、特に高齢になってきたシニア世代の子たちは受けることをおすすめします。
また必要とあらばその他の画像検査を受けてみてはいかがでしょうか。
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