キンクマハムスターの脊椎損傷(前庭器障害含む)
以前、ジャンガリアンハムスターの後躯不全麻痺についてコメントさせて頂きました。
今回は、数か月前から後躯不全麻痺がおこり、次第に神経症状が併発・体を回転させる(ローリング運動)ようになったとのことで来院されたキンクマハムスター君です。
このハムスター君、じっとしていることが出来ないくらい頻繁に移動しローリングをします。
写真も上手く撮れない状態です。
後躯不全麻痺があり、後肢はピンと硬直伸展した状態が続いており、前肢を使って回転運動を絶え間なくしています。
レントゲン撮影を実施しました。
第5腰椎が変形しています。
患部を拡大した写真をご覧いただきます。
黄色矢印で示した第5腰椎が逆くの字の形状を呈しています。
恐らく強い外力によって変形したか、あるいは骨折があり、後に癒合したのかいづれかでしょう。
キンクマハムスター君の硬直した後肢はこの点が原因ではないかと思われます。
ローリング運動については、末梢性か中枢性の前庭器障害が原因と考えます。
レントゲン上では耳の奥の鼓室胞の石灰化(細菌性外耳炎・中耳炎による)が明瞭に認められないため、中枢性の前庭器障害の可能性が強いと思います。
この点は脊椎損傷と直接の関係はないと思います。
ステロイドと抗生剤の投薬を支持して経過観察することとなりました。
ただこのローリング運動が激しいため、体力の消耗が著しいです。
犬や猫ならば、鎮静剤等を投薬して対応しますが、ハムスターのような小動物では簡単に投薬はできません。
結局、1週間ほどの後に残念ですがこのハムスター君は亡くなられました。
犬猫の比べてスケールの小さな動物の場合、検査・治療は限界があることを感じます。