ハムスターやスナネズミ、マウス等、小型齧歯類の歯の特徴は、切歯(前歯)と後臼歯(奥歯)しかありません。

つまり犬猫には普通に存在する犬歯と前臼歯は彼らにはありません。

そして切歯と臼歯を合わせても16本しかありません。

ちなみにウサギは28本です。

ハムスターの切歯は歯根の開いた生涯伸び続ける常生歯です。

切歯が過長となれば、カットして咬合調整します。

一方、ハムスターの臼歯は伸びることはありません。

ウサギの臼歯は常生歯で過長症で悩むことが多いのですが、小型齧歯類の臼歯はその心配はないようですね。

さて、本日ご紹介しますのはファットテール・ジャービルのきなこちゃんです。

右眼の下の皮膚が少し腫れてきたとのことで来院されました。

当初は右眼がうまく開けられない感じ(角膜損傷)を認め、加えて臼歯の歯根部炎症が疑われたため、点眼薬と抗生剤の投薬を指示しました。

3週間ほど自宅での投薬中で、さらに眼下の腫脹が酷くなったとのことで来院されました。

下写真の黄色矢印が腫れている部位です。

口腔内を診ますと右第1後臼歯茎が赤く腫れ上がっています。

3週間前よりも腫脹が著しいため、患部を穿刺して排膿することとしました。

針を刺した瞬間から膿が弾ける感じで出て来ます。

大量の膿が溜まっていました。

きなこちゃん自身も貯留してる膿が気になって、一生懸命眼を引掻いたため、さらに角膜損傷が酷くなり、高度の蓄膿のため瞼を閉めることが出来なくて、角膜が乾燥してしまい、残念ながら失明していました。

臼歯の歯根部は抜歯できるほどグラつきはありません。

犬猫であればここで歯根をダイアモンドバーで分割して抜歯の手順できるのですが、小型齧歯類は非常にデリケートで積極的な抜歯はできません。

歯根部の炎症が沈静化するまで、あるいは歯槽骨が融解して臼歯がグラつくまで抗生剤の内服を継続して頂くこととしました。

排膿処置後は眼下の腫脹は落ち着きました。

問題は高度に受傷した眼球です。

その後のきなこちゃんの眼球です。

今後の右眼の状況いかんでは、眼球摘出が必要になる場合も考えなければなりません。

瞼を閉じることが出来ないため、眼球が乾燥しがちです。

疼痛感から角膜炎からブドウ膜炎へと症状が進行しています。

点眼薬を継続して頂くこととしました。

要経過観察です。

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