ジャンガリアンハムスター(幼体)の断脚
こんにちは、院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、ジャンガリアンハムスターのまだ生後1週足らずで、後肢が血行障害を起こし断脚せねばならなくなった症例です。
ジャンガリアン君(生後8日齢、雄)は、左後肢が腫れあがっているとのことで来院されました。
このジャンガリアン君、母ハムスターが自宅で出産した子供の内の1匹なんです。
良く患部を診ますと糸状の線維が絡みついたような跡があります。
飼い主様によると、下に敷いていた布切れのほつれた線維が絡んだのではないかとのことでした。
全長3㎝あるか否かと言うサイズの動物なので、たとえ糸が1本絡んだだけでも致命傷になることはあります。
既に患部に絡んだ線維は存在していなく、絞扼されて血行障害が認められます。
このまま壊死していくのか、それとも血流は再開するのかが悩ましい問題です。
患部の腫脹が著しいため、まずは浸透圧の差を利用して少しでも浮腫を軽減できるか、患部をブドウ糖液に浸して反応を見てみました。
患部を綿花で包みます。
綿花にブドウ糖液を含ませます。
飼い主様には綿花が乾かないよう、絶えずブドウ糖で患部を浸潤して頂くようお願いしました。
果たしてこの方法でうまく患部の腫脹は治まらないか、期待しました。
3日間、この処置をしていただいたのですが残念ながら改善するほどには至りませんでした。
このままでは患部は壊死を起こし、本人の命も危ぶまれます。
飼い主様と話し合い、断脚することとしました。
まだ生後11日齢という若年齢のため、手術には不安が残りますが実行しました。
全身麻酔は勿論、できませんので局所麻酔することにしました。
線維で絞扼されている箇所を鋏で離断します。
患部断面は離断された血管からの出血が始まりますので、焼烙します。
まだ若年齢なので、比較的止血は短時間で完了しました。
焼烙のショックで死んでしまわないか、この処置が実は一番心配でした。
思いのほか、ジャンガリアン君は頑張ってくれました。
皮膚を髪の毛よりも細い縫合糸で縫合していきます。
手術は無事完了しました。
ジャンガリアン君の術後6日目の患部です。(下写真)
患部の縫合糸が一本取れていますが、傷口は綺麗に癒合しています。
手術時と比べて被毛も生えてきて、一回り大きく成長したジャンガリアン君です。
この手術は耐えられないだろうな、と思われるようなケースでも小型齧歯類幼体は頑張ってくれることが多いです。
ジャンガリアン君は順調に成長してくれてます。
一本後肢が無くても元気です!
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