こんにちは 院長の伊藤です。

腫瘍疾患の動物は、日常診療で増加の傾向にあります。

犬猫に限らず、エキゾチックアニマルについても腫瘍疾患に遭遇する機会は多いと思います。

本日ご紹介しますのは、ウサギの悪性黒色腫です。

ネザーランドドワーフとんぱー君(雄、10歳、体重1.5kg)は口周りに黒いできものがあるとのことで来院されました。

早速、細胞診をして検査センターに送ったところ、メラニン色素を伴った炎症性病変とのこと。

腫瘍細胞は認められないという事なので、その指示に従って抗生剤・抗炎症剤の投薬を開始しました。

ところが、この病変部は治るどころか、さらに大きくなってきました(下写真は90日後のものです)。

腫瘍に関しては、その細胞診と病理検査の結果が異なることはよくあります。

細胞診は腫瘍と思しき腫瘤に注射針などで穿刺吸引して、細胞を顕微鏡で確認する検査です。

一方、病理検査は腫瘤を外科的に摘出して組織として病理標本を作製・鑑定する検査です。

今回、メラニン色素を伴った炎症性病変でなく、むしろ悪性黒色腫を想定した治療に変更することにしました。

つまり、最善策として患部を外科的に摘出することとしました。

まずは、全身麻酔のためガスマスクをさせて導入麻酔をします。

鼻先の腫瘍ですので、ガスマスクをしての全身麻酔では患部にアプローチできません。

ある程度麻酔導入が出来たら、次に手製の小型のマスクに変えて鼻だけにマスクをして全身麻酔します。

出来る限りのマージンを取って腫瘍を切除したいのですが、鼻先ですから限界があります。

電気メスで患部を切除します。

切除跡を縫合する事が困難なため、半導体レーザーのラウンドプローブ(下写真)で患部を蒸散処置し、悪性黒色腫を叩き、皮膚再生を待つ方針で行きます。

患部を蒸散処置した跡は下写真のようにかさぶたが出来たようになっています。

切除した腫瘍です。

病理検査の結果です。

細胞診の時と同じ検査センターに依頼しましたが、検査結果は悪性黒色腫(Malignant melanoma)であることが判明しました。

低倍の画像です。

高倍率の画像です。

異型性の明らかな紡錘形もしくは多角形の腫瘍細胞によって、構成されています。

腫瘍細胞の細胞質には下写真黄色丸にあるメラニン色素顆粒が認められます。

病理医からのコメントは、この腫瘍は局所浸潤性・遠隔転移性が高い注意を要する腫瘍であるとのことでした。

体表部に出来る黒色腫(メラノーマ)は良性のものが多い一方で、口唇や口腔内に発生するものは悪性であることが多いとされます。

細胞診の成績で内科的治療に対応していた二か月余りが悔やまれます。

術後3週目のとんぱー君です。

術後の経過は良好で患部は綺麗に皮膚が再生しています。

今後はとんぱー君の悪性黒色腫の再発を経過観察していきたいと思います。

とんぱー君、お疲れ様でした!

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