こんにちは 院長の伊藤です。

ウサギの皮膚腫瘍は、これまでにも何例か報告させて頂きました。

今回ご紹介するのは脂肪腫と毛芽腫の両方が同一の個体に発症した症例です。

しかも大きさがかなり大きいです。

ウサギのマリオ君(6歳、雄)は、頸とお尻に大きなしこりが出来たとのことで来院されました。

腫瘍がどれくらいの大きさなのかは体毛が多く良くわからないため、剃毛直後の手術時の写真を先にお見せしておきます。

下写真の黄色丸がその患部になります。

お尻の腫瘍です。

この部位を細胞診しました。

毛芽腫と判明しました。

次に頚腹部の腫瘍です。

同じく細胞診を実施しました。

こちらは脂肪腫であることが判明しました。

毛芽腫と脂肪腫は共にウサギの皮膚腫瘍としては日常的に認められる良性腫瘍です。

ただマリオ君の場合は、腫瘍が巨大なため採食行動もままならないとのことで外科的に切除することとしました。

術前に血液検査を行い無事麻酔をかけられるか確認します。

血管を確保して点滴が出来るように留置針を頭側皮静脈に入れます。

麻酔が十分にかかったのを確認して切除手術にかかります。

切除後の皮膚です。

縫合後の皮膚です。

次に巨大な頚腹部の腫瘍です。

出血を極力抑えるために同様に電気メス(バイポーラ)で切除していきます。

皮膚を切開していくと皮下組織に腫瘍が顔を覗かせています。

腫瘍切除後の皮膚です。

大きな欠損ができました。

この部位は腋下部に及んでるため、皮膚が稼働する箇所でもあり、縫合部が前足の運行により吻開する可能性があるためステンレスワイヤー(細い針金)で実施することにしました。

ワイヤーの結紮部がハリネズミのように出ていて痛々しい感がありますが止むを得ません。

手術は無事終了し、覚醒を促すため静脈からアチパメゾールを注入します。

覚醒したマリオ君です。

下写真は摘出した腫瘍です。

随分大きいのがお分かり頂けると思います。

術後に患部を齧るウサギは多いため、保護のためストッキネットでポンチョを着せることにしました。

退院後にご自宅で患部を齧ったりして一部縫合部が吻開したりするアクシデントもありましたが、無事抜糸した4週間後のマリオ君です。

お尻の部位も綺麗に治りました。

今回はいずれも良性の腫瘍でありましたが、大きな腫瘍であるほどに術後の管理も重要です。

マリオ君お疲れ様でした!

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