ウサギの頚部咬傷(肉垂損傷)
ウサギの雌はどんなに遅くとも、2,3歳以降になりますと頚部下方に大きな肉のヒダが形成されます。
これを肉垂(にくすい)と称します。
この肉垂は個体差があり、肥満傾向のあるウサギは大きな肉垂をしていることが多いです。
よく肉垂を指してウサギのマフラーといわれる飼主様も多いです。
出産時にこの肉垂の被毛をむしって、巣材にしたりもします。
今回、ご紹介しますのは、三重県からはるばるご来院頂きましたホーランドロップイヤーのきなこちゃん(7か月)です。
きなこちゃんは、この肉垂の付け根にあたる皮膚が炎症を起こし、自身で齧って皮膚潰瘍になってしまいました。
上写真黄色丸で囲んだ部位が、自咬症で生じた皮膚の傷です。
すでに薄い瘡蓋が形成されていますが、きなこちゃんからすると患部が痒いようで自咬が続いているようです。
早速治療に入ります。
まず患部を丹念に消毒液で先勝消毒します。
患部に肉芽組織形成を促すクリームと抗生剤のクリームを塗布します。
患部を保護するためにガーゼでテーピングして保護します。
遠方から受診されていますので、ご自宅で患部の消毒とクリームの塗布を指示して終了です。
下写真は、きなこちゃんの3週間後の患部です。
潰瘍を起こしていていた患部は、きれいに新生した皮膚に被覆されています。
発毛もすでに始まっており、患部を隠すくらいになっています。
肉垂は大きいほど皮膚の間で通気性が悪くなりますので、状況によっては湿性皮膚炎を引き起こします。
皮膚炎の患部が気になり始めますと、今回のきなこちゃんの様に自咬に走る可能性があります。
ウサギの切歯(前歯)は非常に鋭利ですから、簡単に皮膚を剥離してしまいます。
暑い日が続きます。
大きな肉垂をお持ちのウサギを飼育されている飼主様は、肉垂の周囲の皮膚が蒸れて炎症を起こしていないかご確認ください。