ウサギの切歯・臼歯過長症
ウサギの歯科疾患は、切歯または臼歯の不正咬合を背景にした過長症が圧倒的に多いです。
ウサギの歯は、切歯(前歯)臼歯(奥歯)の全てが一生伸び続けます。
これらの歯を称して
「常生歯」
と言います。
文字通り「常に生える歯」と言う意味です。
資料によっても微妙に違いがありますが、ウサギの歯の伸びる速度は3~4才までぐらいの若い時期には
上顎の切歯で月に8ミリ、下顎の切歯は少し早く月に10ミリ程度伸びると言われています。
臼歯も月に10ミリ程度伸びるとされていますが、
それらも栄養状態などによって違ってくると思いますし、
高齢になるほど伸びる速度は遅くなるようです。
歯の咬み合わせが悪い場合、顎関節の咬み合わせを修正することはできませんので、結果として歯が伸びたらカット・研磨をして歯の咬合をコントロールしていきます。
食餌の内容も重要になってきます。
切歯は食物をもっぱら咬み切る運動をし、臼歯はすり潰す運動をします。
チモシー(乾草)を中心の食生活をしているウサギは切歯も臼歯もバランス良く摩耗していますが、ペレットフードが中心のウサギになりますと特に臼歯が伸びて食欲が消失します。
切歯の過長は唇をまくると上下に伸びますので、すぐにわかります。
一方、臼歯は開口器を使用して初めて過長が判明します。
下顎の臼歯は、舌に向かってトゲのように伸びて舌に潰瘍を作ります。
上顎の臼歯は、頬の内側をトゲのように伸びて、同じく潰瘍を作ります。
いずれにしても、よだれが過剰に出て痛さのあまり食欲は消失します。
当院では、過長の切歯・臼歯はニッパー・やすりあるいはマイクロエンジンンのハンドピースで切断をしています。
基本的には麻酔は実施せず、手際良く処置を心がけています。
それでも暴れたり、神経質なウサギには全身麻酔を施しています。
下の写真は切歯が過長のウサギ達です。
次は臼歯が過長になったウサギです。
上段左の写真は右上顎の臼歯が頬内部に食い込んでいます(矢印に示す)。
上段右の写真は下顎臼歯の過長です。矢印に示すように舌に食い込んで舌潰瘍になっています。
下段の写真も同じく下顎臼歯の過長です(鼻腔内にガスマスクを当て全身麻酔をしてます)。
歯にまつわる問題は適切な歯の切断で解決されます。