ウサギの歯にまつわる疾病は多く、日常的にも歯科診療の占める割合は多いと言えます。

特に歯周病が原因で生じる膿瘍を目にします。

歯根部からの細菌感染から皮下膿瘍、眼窩膿瘍に至る症例をご紹介します。

ウサギの まるちゃん(3歳4か月、雌)はこの1,2か月前から右眼が突出して来て、眼の周辺の皮膚が腫れているとのことで来院されました。

下写真黄色丸にあるように右眼球が突出しています。

眼の周辺を触診しますと粘稠性のある液体が貯留しています。

それはおそらく膿であり、皮下膿瘍、場合によっては眼窩膿瘍が生じていると思われます。

まずは、レントゲン撮影を実施しました。

黄色丸で囲んだ部位が突出している眼球と皮下の膿瘍と思しきmass(塊)を表します。

側面の画像では、黄色丸の部位が石灰化を起こした上顎臼歯の根尖膿瘍部(歯根部の膿瘍)を表しています。

患部を排膿するため、皮膚を注射針で穿孔します。

穿刺と同時にクリーム状の膿が皮下から流れ出してきました。

膿瘍を圧排した後、消毒液で患部の洗浄を行います。

膿が無くなった分、眼元がスッキリした感じです。

歯周病が高度に進行しすると口腔内を覗いて歯に触れただけで歯根部のグラつきが触知されます。

その場合は当然抜歯から始めます。

しかし、重度の膿瘍を伴わない臼歯の場合、抜歯は容易ではありません。

ウサギの骨密度は犬の半分以下と言われます。

慎重に抜歯しないと顎骨が骨折します。

したがって、多くの症例は膿瘍の治療が中心となります。

犬猫と異なり、ウサギの場合はカプセルの様に膿を有壁性の嚢胞で取り囲みます。

このスタイルを取ることで、細菌や細菌毒素が全身に回ることを防いで入るとも言えます。

そのため、抗生剤を投薬しても感染部位の細菌に薬剤が直接ダメージを与えることは難しいとされます。

内科的治療と共に、必ず排膿処置を並行して実施する必要があります。

また臼歯の根尖膿瘍は顎骨融解をもたらす場合があります(特に下顎骨)。

状況に応じて、この融解部を外科的に切除することもあります。

今のところ、まる君の患部は骨融解はありませんが、膿瘍が消退するまで治療は続きます。

まる君、治療頑張って行きましょう!

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