こんにちは 院長の伊藤です。

ウサギの消化器疾患を招く病原体はコクシジウム(内部寄生虫症)やクロストリジウム(腸性自家中毒症)が有名です。

これらの感染症は治療が必要です。

重度感染を受けたウサギは致命的となる場合があります。

本日ご紹介しますのは、見た目は非常に気味の悪い寄生虫なんですが、感染しているウサギ自体には悪さをしないとされるウサギ蟯虫症です。

このウサギ蟯虫症については、以前にコメントをさせて頂きました。

詳細はこちらを参照下さい。

ウサギの蟯虫感染は日常的に遭遇する機会が多く、そして飼主様が駆虫を強く希望されるケースも多いです。

そのため、今回改めて蟯虫症についてまとめたいと思います。

ネザーランドドワーフのヒノアラシ君(4か月齢、雄)は排便した便の表面に動く白い寄生虫がいるとのことで来院されました。

下写真がヒノアラシ君の便です。

黄色矢印が蟯虫です。

蟯虫を拡大します。

顕微鏡下でみた蟯虫です。

ウサギ蟯虫は5~10㎜の半透明の細長い形態をしています。

その形状はシラスに似ています。

蟯虫はウサギの盲腸・結腸に寄生します。

蟯虫は、ウサギの腸内の微生物を摂取して生きています。

他の寄生虫の様に腸内の栄養を横取りしたり、腸粘膜に障害を与えたりしないので宿主が疾病になることはありません。

蟯虫は夜半になると肛門周囲に現れ、肛門周囲の皮膚に産卵します。

そのため、蟯虫の検査はセロテープを肛門周囲に当てて、それをスライドガラスに貼り付け顕微鏡で確認をします。

ウサギは自身の盲腸便を食べますので、肛門周辺に付着した卵をその時に一緒に摂取してしまうため、蟯虫の生活環を遮断するのは意外と難しいです。

治療は、イベルメクチンやセラメクチン、フェンベンダゾールの投薬を行います。

当院では、セラメクチン(®レボルーション)を皮膚に滴下して対応することが多いです。

前述した理由で蟯虫はウサギに悪さをすることはないのですが、見た目の気持ち悪さから飼主様の受けは悪いです。

また、犬回虫のようにヒトに感染することもありません。

ただ成長期のウサギの場合、蟯虫によって腸内細菌叢が変化して成長が遅延することもあります。

加えて、重度寄生の場合は下痢・体重減少・被毛粗剛になったりします。

ウサギ同士の感染は、便に含まれてる虫卵を摂取することで成立します。

したがって、糞便の処理を迅速化確実に行って下さい。

また、飼育環境を衛生的に保つ上で、まめにケージやトイレを熱湯消毒すると良いです。

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