ウサギの毛芽腫(その3)
こんにちは 院長の伊藤です。
ウサギの皮膚腫瘍の中で、遭遇する機会のもっとも多いのが毛芽腫です。
これまでにも2回ほどウサギの疾病紹介でコメントさせて頂きました。
過去のコメントについてはこちらを参照下さい。
毛芽腫は良性の腫瘍なんですが、短期間に大きくなったりする症例も多いです。
飼い主様から、この毛芽腫についてはよく質問を受けますので、今後も特徴的な事例紹介を継続していきます。
ウサギのハッピー君(ミックス、雄、5歳)は頸の下にできた腫瘍が数か月の内にだんだん巨大化してきたとのことで来院されました。
下写真の黄色丸の部分が毛芽腫です。
かなりの大きさであることがお分かり頂けると思います。
ハッピー君はこの巨大な毛芽腫を動くたびにぶつけたり、自分の脚で踏んだりして傷つけているようです。
毛芽腫の下端は変色して瘡蓋も出来ています。
細胞診をしました。
毛芽腫の腫瘍細胞が多数認められます。
加えて、細菌感染と膿の産生も確認されました。
腫瘍が自壊して膿瘍が形成されていると思われます。
物理的にもこの毛芽腫は、移動時の障害になりますので外科的に摘出することとなりました。
イソフルランによるガス麻酔を施します。
出来うる限り腫瘍のマージンをとって、切皮ラインを決めて行きます。
これだけ大きな腫瘍となると多くの栄養血管が周辺組織から流れ込んでいます。
バイクランプで血管をシーリングします。
特に出血することもなく無事、毛芽腫は摘出できました。
下写真は摘出後のまだ完全に麻酔覚醒していないハッピー君です。
頚部を広く切除したので、縫合部がちょっと痛々しいです。
無事、麻酔から覚醒しました。
摘出した毛芽腫です。
この毛芽腫に割を入れたところが下写真です。
既に膿瘍ができている部位は壊死が起こってます。
腫瘍内は点状の出血も認められ、ハッピー君の細菌感染対策が今後の課題です。
術後のハッピー君は食欲も旺盛で、翌日退院されました。
退院して2週間後のハッピー君です。
縫合部の抜糸のため来院されました。
広範囲の切除でしたが、綺麗に皮膚はついています。
今回の様にいかに良性の腫瘍でも巨大化することで、歩行の障害になったりするケースは積極的に切除することをお勧めします。
ハッピー君はこの大きな毛芽腫が切除されたことで、身軽な動きが出来るようになりストレスから解放されました。
ハッピー君、お疲れ様でした!
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