新米獣医師カーリーのつぶやき-part62~体重減少①~-
こんにちは、獣医師の苅谷です。
この1週間、大寒波によりかなり冷え込んできて、先日は雪も降りましたね。
年始頃はまだ暖かく暖冬と言われていましたが、まだまだしばらくは寒い日が続くようです。
今回は問題となる体重減少についてお話しします。
問題となる体重減少でまず判断するところは食欲があるかないかです。
食欲がありながらも体重が減少している場合です。
一つは食餌の内容です。
そのこの動物種、年齢に必要な栄養素やエネルギー量が足りているかどうか、多頭飼いの場合、他のこに食べられてしまってないかが考えられます。
次に挙げられるものは消化・吸収不良によるものです。
この場合下痢もしくは軟便が続いたり、便の色が灰白色っぽかったりします。
食餌自体が体に合わなかったり、小腸や大腸に問題(蛋白漏出性腸症など)、膵外分泌不全(食餌を分解する酵素が作られなくなるもの)が考えられます。
もう一つ挙げられるものとして代謝異常に伴うものです。
体の中で血糖が上手く利用できなくなる糖尿病や甲状腺ホルモンの異常分泌で代謝が異常なほどに活発になってしまう甲状腺機能亢進症があります。
糖尿病の場合、細胞が活動するための血糖が上手く利用できなくなると次は体脂肪やタンパクを利用し、エネルギーを作っていきます。
食べて体に入ってくる糖以外のエネルギーとして利用できるものよりも体脂肪のほうが利用されやすいため、どんどんと痩せていくきます。
また体脂肪の代謝がひどく進んでくると血液が酸性に傾くケトアシドーシスになり、嘔吐、下痢、多尿などが起こり、食欲不振にも陥ります。
また呼気や尿からケトン臭(甘酸っぱい臭い)を感じ取ることがみられます。
甲状腺機能亢進症の場合、甲状腺から分泌されるサイロキシンと呼ばれるホルモンが過剰に分泌されてしまい体全身のエネルギー代謝が活発な状態が続いてしまうものです。
これは高齢の猫においてよく認められる病気で体重減少の他に動きが活発・好戦的になったり、落ち着きがなくなったり、多飲多尿になったりし、毛づやも悪くなってきてガリガリに痩せてきてしまいます。
この病気では甲状腺ホルモンが体全体の臓器に過剰に働きかけてしまうため、症状が進んできてしまうと心臓や肝臓などの臓器にも多大なダメージを与えてしまいます。
食欲がありながら体重が減少してしまうものの最後に挙げるのが腫瘍によるものです。
これは腫瘍のできている部位によって少しかわってきますが、腫瘍は急速に成長するため、栄養素を大量に必要とします。
そのために優先的に栄養素を手に入れるために栄養素を運ぶ道となる血管を作り、どんどんと体の主要臓器に運ぶはずだった栄養素を奪っていきます。
この状態になると体の中に残っているエネルギー源(体脂肪など)を使っていくことになるため、体重が減少していきます。
また、消化管(小腸や大腸など)にできてしまう場合、物理的に消化不良が起こり得ります。
今回は以上で終わります。
次回体重減少(食欲なし)の場合をお話しします。
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