新米獣医師カーリーのつぶやき-part82-~高脂血症~
こんにちは、獣医師の苅谷です。
もう七月も終わり、気温は高くなってきて曇り空ですが夏真っ盛りですね。
熱中症になりやすい時期になってきましたので十分に注意してください。
今回は高脂血症についてお話します。
高脂血症とは血液検査で総コレステロール(T-chol)や中性脂肪(トリグリセリド(TG))のそれぞれまたは両方が高い時のことを示します。
高脂血症になるとどのような症状が出てくるかというと・・・
ヒトであれば動脈硬化や心筋梗塞といった循環器疾患になりやすくなりますが、犬や猫においてはあまりないです。(善玉と悪玉コレステロールの割合がヒトとは異なるため)
高脂血症がひどくなると急性膵炎や角膜の脂質沈着、発作などが起こることもあります。
また高脂血症は食後の影響を受ける場合と遺伝的に関わってくる場合と内分泌・代謝性疾患に関わってくる場合に大きく分けられます。
まず総コレステロールや中性脂肪に食後の影響はどの様に出てくるかというと・・・
食後より30分ほどで上がり始め、4~5時間にて値のピークを迎えます。
血液検査にて食後の影響を防ぐには12時間以上の絶食する必要があります。
12時間絶食した状態でで高脂血症になっている場合は何かしらの原因があると考えます。
次に遺伝的に関わってくる場合に関してです。
遺伝的にミニチュアシュナウザーでは中性脂肪が高くなり、シェルティーではコレステロールが高くなります。
正常な状態でも起こることもあり、膵炎のリスクを上げる他、血液検査にて病気が分かりずらくなります。
そして、一番問題になってくるものは病気になって現れてくるものです。
糖尿病や甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、肝機能障害で代謝障害が起こって高脂血症になります。
糖尿病では体内での糖の利用が出来なくなるため、代わりのエネルギー源として中性脂肪(TG)を使用します。
この場合、体に蓄えられた脂肪がエネルギー源として利用され始めるため中性脂肪が高くなります。
甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの機能が低下するため、体の代謝が落ち、細胞内へコレステロールや中性脂肪の取り込みが上手くいかなくなることで高脂血症になります。
副腎皮質機能亢進症では副腎皮質ホルモンが過剰になるため、糖や脂質代謝に影響を及ぼし、高脂血症になります。
肝機能障害の場合、肝臓の働きとしてエネルギー代謝全般やコレステロールを基として作る胆汁酸の生成を行っており、機能障害に陥ると代謝異常が起こったり、胆汁酸が生成されず、その分の余剰のコレステロールが多くなり、高脂血症になります。
基本的に高脂血症になっている場合基礎疾患(糖尿病や甲状腺機能低下症etc…)の治療を行ってきます。
基礎疾患がなく、絶食時の血液検査で高脂血症であった場合、膵炎といった病気のリスクが高くなるため、食餌を見直す必要があります。
食餌は低脂肪、高繊維食となります。
低脂肪食は体に吸収する中性脂肪の量を制限するため、高繊維食は腸からの胆汁酸の吸収を抑え、体内での胆汁酸の生成を促してコレステロールの消費を促すためとなります。
食餌に関しては短期間で結果が出るわけではないため、1か月ほど継続して血液検査をして効果があるか判定します。
食餌だけでは改善が認められない場合は魚の油に含まれるDHAやEPA、ポリフェノールといった成分を含むフードやサプリメントを使用します。
ヒトの場合、薬による治療もありますが、動物においては最終手段でまずは食餌やサプリメントで対応していくこととなります。
最後に高脂血症は肥満な動物にとても深く関係しています。
肥満は他にもいろいろな病気にも関係してきます。
ついついかわいくておやつやフードを与えすぎて太らせすぎないように注意しましょう。
今回は以上で終わります。
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