こんにちは。獣医師の平林です。

ブログを見てくださっているみなさんはこの年末年始、どこかにお出かけされたでしょうか?

それともご自宅で日頃の疲れを取られた方も多いでしょうか?

私は飛騨に行ってきたのですが、出身大学が青森県ということもあり、久々の雪景色に癒されておりました。やはり一面の銀世界というのは美しいですね。

さて、私にとって新年最初の記事ですが、今回は便検査についてお話させて頂こうと思います。

最近はすっかり寒くなって、お腹の調子が良くないと言っていらっしゃる子も多く、便検査をする機会も多いです。

みなさんは便検査、というとどういった時にするイメージをお持ちでしょうか。

下痢はもちろんのこと、嘔吐体重減少脱水貧血など、実は様々な症例において行われています。

消化器疾患は原因として非常に幅広い可能性が考えられるため、侵襲性の低い=動物の負担になりづらい検査として、便検査は診察の初期においてとても大事な検査のひとつです。

では、実際の便検査の様子を見てみましょう。

今回はいくつかある便検査のうち、最も簡便で、普段の診察においても日常的に行われている、直接塗沫法をご紹介します。

下の写真は、採便棒を使って新鮮な直腸便を採取している様子です。

撮影に協力してくれているのは当院の看板犬、ドゥです。

いたって健康なのに便検査をされて、少しふてくされた顔をしていますね。

このようにして採取した新鮮な便を、スライドグラス上に滴下したお水の上でほぐしていきます。

この時の検体の濃度は、新聞の上にスライドグラスを置いても文字が読めるくらいがちょうど良い濃さとされています。

これにカバーグラスを、気泡が入らないように優しく乗せて完成です。

では、これを顕微鏡で見てみるとどんなものが見えてくるのか、実際に写真を交えながら見ていきましょう。

消化器症状により来院されて検便を行ったもののうち、寄生虫感染が見られた症例をいくつかご紹介します。

今回は寄生虫の卵をメインに紹介させて頂きますね。

こちらは原虫の感染が見られたものです。

コクシジウム類の原虫が動物の体内で有性生殖を行った結果、オーシストという構造物が作り出されます。

上の写真中央に存在する丸い構造物がそれにあたります。

便の中にはこのオーシストが大量に含まれており、これを口に入れてしまうことで他の動物へと感染していきます。

こちらは線虫、というグループに属する寄生虫の感染例です。

さきほどの原虫類と違い、成虫になると肉眼で容易に確認できる大きさになります。

動物の腸管の中で成虫となり、そこで卵をたくさん産んでしまうため、便中にはこれらの卵をたくさん含んでしまうことになります。

フィラリアの予防薬の中には腸管に寄生しているこれらの虫を落とす効果を持つものもあるので、「家でフィラリアのお薬を食べさせたらそうめんみたいな虫がお尻からたくさん出てきた!」という経験をもつ飼い主様もいるかもしれませんね。

こちらは条虫というグループに属する寄生虫です。

いわゆるサナダムシの仲間ですね。

条虫の寄生を受けたネズミやカエルなどを食べてしまったりといったことから感染し、野良ネコさんに多い寄生虫の一つです。

種類によっては、ノミが媒介するものもあります。

この虫に感染すると便のなかにや、卵を含んだ虫体の一部(片節といいます)が出てきます。

上の写真は、マンソン裂頭条虫という種類の成虫の写真です。

顕微鏡で見ていてもあまり気持ちのいいものではないですが、肉眼で見ることができる成虫のサイズになるとより気持ち悪いと感じるかもしれませんね。

今回は寄生虫に絞って写真をいくつか紹介させて頂きましたが、いかがだったでしょうか。

便検査は消化器疾患をはじめ、ワクチン接種の際の健康診断でも行われているので、病院でやったことがある飼い主様も多いかと思いますが、実際の便検査はこのように進んでいきます。

ここのところウチの子がちょっとおなかの調子悪いかな、と感じたら悩まずに病院に来ていただいて診させていただくといいですね。

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