お久し振りです。獣医師の平林です。

暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。

我が家では人間、犬、爬虫類、両生類とで喧嘩になりつつ、人間が我慢することでなんとか空調の折り合いをつけております。

みなさんも熱中症にならないよう、屋外はもちろん、屋内でも気温に十分注意してお過ごしくださいね。

さて今回のお話ですが、こんな前振りをしておきながら熱中症のお話ではありません。

……はい。歯石がびっしり付いた写真をたくさん見て頂きましたが、今回は歯周病についてのお話です。

先日うちの犬も歯石除去を行ったので、その写真もあとで紹介させて頂きますね。

犬の歯周病は、主に歯の表面に付着した歯垢が原因となって引き起こされます。

これは食べ物のカスと細菌の塊で、放置しておくと唾液中のカルシウムが沈着し、歯石となります。

歯石になってしまうと、硬くて歯磨きではもちろん落とせませんし、表面がザラザラしているのでさらに歯垢が付きやすくなってしまいます。

また、ウエットフードを主に食べている子は、ドライを食べている子よりも歯石の蓄積は早い傾向にあります。

歯周病になってしまうと、口臭がきつくなったり、歯肉が赤く腫れたり、出血したり、歯がグラグラになってきたりします。

また、痛みによって硬いものが食べられなくなったりします。

感染が重度になり、歯の根っこの部分まで炎症が及んで膿が溜まった状態を、根尖膿瘍と呼びます。

ここまで歯周病が進むと、歯槽骨や顎骨が融解したり、歯肉や皮膚に穴が開いて膿を排出したりといったことが起こります。

眼の下が突然腫れて、皮膚が弾けて出血と排膿が止まらなくなる、といったケースはしばしば遭遇しますが、これは上顎の第四前臼歯の歯周病から波及していることが多いです。

歯周病まで至ってしまった場合は当然治療が必要になる訳ですが、そうならない為には定期的な歯石除去が大切になってきます。

定期的、とは言っても歯はどの犬も一様のスピードで汚れていく訳ではありません。

フードはドライなのかウエットなのか、人間のご飯を食べていないか、ガムやサプリメント等のデンタルケアはしているのか、そして何より歯ブラシで物理的な歯垢の除去をしているのか、によって大きく変わってきます。

ですが、当院では5年に1度の歯科処置、というのを1つの目安としてオススメさせて頂いています。

さて、ここから先は我が家の蓮くん(ミニチュアピンシャー、4才)が歯石除去をした時の写真を使って実際の歯科処置の流れをご覧頂こうと思います。

麻酔導入です。

人間のホワイトニングとは違い、処置中はワンちゃんは当然動いてしまうので、どうしても全身麻酔が必須になります。

これが術前の歯石の付着状況です。

まだ4才なので凄く汚れている、ということは無いですが、前臼歯の歯肉との境界に歯石が沈着しているのがお分かり頂けると思います。

また、画面では残念ながら伝わりませんが、口臭はかなりきついです。

超音波スケーラーを用いて、歯石を除去しています。

歯肉縁は特に重点的に行います。

スケーラーで歯石を除いただけでは、歯の表面は粗く、新たな歯石が沈着しやすい状態となっています。

そのため研磨剤を使っての仕上げ磨きが必要で、ポリッシングと呼びます。

残った細菌や研磨剤を洗い流したら終了です。

術前の写真とはだいぶ変わったのがお分かり頂けますでしょうか?

歯石除去はこれで終了となりますが、大切なのはこれからです。

歯石がまた溜まって今回のような処置が必要になる日がいつかは来るとは思いますが、その日が1日でも遅くなるよう、おうちでのデンタルケアがとても重要です。

歯磨きが出来ればそれが一番ですが、日常的にケアが出来なければ意味が薄くなってしまうので、飼主様、ワンちゃん、それぞれに負担の少ないやり方を探してあげてください。

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