新米獣医師カーリーのつぶやき-part65~滅菌・消毒②~-
こんにちは、獣医師の苅谷です。
暖かくなってきて春が来たかなと思ったら、最近急に冷え込むようになってきましたね。
寒暖差があると体調を崩しやすくなりますし、花粉なども飛び始めていますので対策は十分に必要ですね。
今回は前回の続きの消毒についてお話しします。
前回もお話ししましたが、消毒とは病原性のある微生物を症状が現れない程度まで殺滅・減少させることを示します。
では消毒にはどのようなものがあるのでしょうか?
消毒には煮沸消毒、熱水消毒。蒸気消毒、間歇消毒、紫外線消毒、薬液消毒があります。
前から4つが熱による消毒法で、紫外線は光線による消毒法、最後の消毒法はアルコールやヨードチンキなどの化学薬品を使用したものです。
まず始めの4つについてお話しします。
煮沸消毒は沸騰している100℃の熱湯に15分間以上沈めることで消毒する方法です。
これによりほとんどの細菌(芽胞菌除く)、ウイルス、真菌を殺滅することができます。
熱水消毒は80℃ほどの熱水にて10分間入れることで消毒する方法です。
熱水消毒は煮沸消毒よりも温度が低くなってきているのでその効力としては劣り、ほとんどの細菌(芽胞菌除く)、ウイルス、真菌の感染を成立させないレベルまで死滅・不活性化させる消毒の方法となります。
こちらの2つであれば水と加熱するコンロや火があればお手軽に行え、経済的な消毒法であるため、熱に耐性のある金属やガラス瓶といったものであれば自宅でもできます。
蒸気消毒は100℃の蒸気に30~60分ほど放置することによりほとんどの細菌(芽胞菌除く)、ウイルス、真菌を殺滅する方法です。
間歇消毒は80~100℃の熱水もしくは蒸気を1日に30~60分間を3~5回繰り返し、上記の3つで対応できなかった芽胞菌に対処するための方法となります。
蒸気消毒と間歇消毒は時間とその処理が煩雑なため、前回滅菌法にて紹介した高圧蒸気滅菌の普及に伴って現在は使用されなくなってきました。
次に紫外線による消毒です。
これは紫外線の照射によって細菌やウイルスといった微生物のDNAに損傷を与えて、増殖させないようにする消毒法です。
紫外線照射装置も単純で安価で購入でき、のちに紹介する薬剤消毒で問題となる薬剤の表面への残留がない利点があるものの、照射をやめてしまえば効果がなくなることや照射した表面しか効果がない、水分があると効果が弱まる、原虫類は死滅させることができないといった欠点もあります。
最後に薬剤消毒です。
薬剤消毒は薬剤に浸ける浸漬法と薬剤を染込ませたガーゼで拭く清拭法、スプレーなどで散布する方法、チューブや内視鏡などといった細い内腔構造のものになかに通して消毒する還流法があります。
また消毒薬にもその薬剤の強さによって段階があり、3段階に分かれます。
一番強い薬剤になってくると消毒できる範囲はほぼ全ての微生物に及び、時間を費やすと芽胞菌をも殺滅できますが、生体への損傷や器具の損傷が激しいため使用には注意が必要です。
こちらにグルタラール、フタラール、過酢酸があります。
二番目に強い、中程度の薬剤では芽胞菌は必ず倒せるわけではないですが、ほとんどの微生物を殺滅できる力を持ちます。
これには塩素系漂白剤に使われているもの、ヨード系の消毒薬、アルコール系の消毒薬、フェノール系の消毒薬が含まれます。
この程度の薬剤から日ごろ消毒に使う薬剤が登場してきます。
三番目の低度の薬剤では芽胞菌を除くほとんどの細菌、一部のウイルスや真菌を殺滅する力を持ちます。
こちらには塩化ベンコザルニウムやクロルヘキシジン、両性界面活性剤があります。
一般家庭だと中~低度の消毒剤を使うことになりますが、濃度や使用部位、使用条件を間違えると消毒部位を傷つけたり、まったく効果がなかったりします。
またそれぞれの薬剤を取り扱う際には気を付けなければいけないことがあるのでそれに注意して使用しましょう。
今回は以上で終わります。
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