新米獣医師カーリーのつぶやき-part79-~甲状腺機能亢進症~
こんにちは、獣医師の苅谷です。
今年も花粉症の時期に入りましたね。
今年は鼻というより眼の方が症状がつらいかなと思う今日この頃です。
マスクならば気軽につけられますが、ゴーグルまでとなると少し億劫になっている苅谷です。
今回は甲状腺機能亢進症のお話をします。
この病気は以前お話しした甲状腺機能低下症とは逆に甲状腺ホルモンの分泌が過剰になり、体の代謝系に異常が起こります。
シンガーソングライターの絢香さんがこの病気に罹り、一時期闘病のために活動休止していましたね。
また甲状腺機能亢進症は人においてバセドウ病とも呼ばれます。
この病気は中高齢の猫においてよく認められますね。
前回にもお話ししましたが、甲状腺ホルモンは体の代謝系を働き、細胞の活動を活発化させます。
甲状腺機能低下症では元気がなくなる、体重が増加するといった症状がありましたが、甲状腺機能亢進症は低下症とは真逆の症状を現します。
症状としては以下の通りです。
・食欲旺盛だが、体重が減少する
・落ち着きがなくなる
・以前に比べて攻撃的になった
・毛のつやが悪くなる
・水の飲む量が多くなる
甲状腺機能亢進症の状態が進行していくと心臓や腎臓を始め、様々な臓器に影響を与えます。
そのため、二次的に心不全や腎臓病になってしまいます。
また甲状腺機能亢進症は甲状腺の過形成や肥大、甲状腺がんなどの腫瘍によって起こるため、甲状腺がある首のところに腫瘤を認めることがあります。
さて以上の症状が現れた場合甲状腺機能亢進症も疑いますが、中高齢ということで腎機能や肝機能などもチェックが必要になってきます。
そのためまずは一般的な血液検査を行い、それに追加して甲状腺ホルモンの値を調べる必要があります。
一般的に測定される甲状腺ホルモンも2種類あり、T4とfT4です。
甲状腺機能亢進症は過剰に甲状腺ホルモンが分泌されるのでこれらの値は高くなります。
甲状腺機能亢進症と判明して、治療はどのような方法があるかというと・・・
・甲状腺ホルモンを抑える抗甲状腺薬を内服する内科療法
・食餌中のヨウ素を制限する食事療法
・腫大した甲状腺を摘出する外科療法
が挙げられます。
まず食餌の管理で何とか甲状腺ホルモンの数値を抑えることから始めていきます。
それでも甲状腺のホルモンのコントロールが難しい場合、抗甲状腺薬の内服も考慮します。
外科療法は大きくなりすぎた場合に適応になりますが、甲状腺ホルモンは全身に作用しており、いろいろな臓器に影響が出ているため、上記の内科療法で状態が安定してから行います。
どのような内分泌の病気にも言えることですが、完全に治すことは難しく一生付き合っていく必要のある病気です。
猫の場合、高齢になってから発症が多いので麻酔をかけなければならない外科適応が難しい場合があります。
お薬の内服も猫ちゃんによってはストレスと感じるこもいるため、できれば食餌で管理していくことがよいと思います。
今回は以上で終わります。
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