こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、オカメインコの卵管蓄卵材症という舌を咬みそうな疾病です。

もとより、鳥は排卵して卵管を卵が下りていく間に卵白や卵殻が形成され、産卵に至るというプロセスがあります。

卵が無事卵管から総排泄腔へとスムーズに降りてくれれば、以前ご紹介した卵塞(卵づまり)にならずに済みます。

今回の卵管蓄卵材症は、卵を形成すべき材料が異常に分泌され続け、これらが排泄されずに卵管内に蓄積してしまった状態を指します。

オカメインコのほたるちゃんは、下腹部が異常に張ってきたということで来院されました。

上の写真の黄色丸で囲んだ部分が腫脹している下腹部です。

触診しますと指先に卵殻の硬い感じがありました。

まずは卵塞の可能性を考慮して、指先で優しく圧迫して総排泄孔から卵を出そうと試みました。

普通の卵塞ならば、そんなに苦労せずに卵が顔を出してくれるのですが、今回は厳しい感じです。

総排泄腔から卵管が脱出してきました。

早速、卵管の状態を把握するためにレントゲン撮影を実施しました。

この時点で、手術の必要性を感じてマスクをかけ、全身麻酔を施しました。

上の写真を局所的に拡大します。

黄緑色の矢印は脱出した卵管です。

黄色丸で示したのが形成が未熟なままの卵殻と卵材です。

ほたるちゃんはここのところ、発情が酷く産卵も集中していたとの事です。

まずは、脱出した卵管に切開を加えて卵材の摘出を試みました。

ゆで卵のような卵黄や卵白が出て来ました。

卵白と卵黄の混在物や卵殻の破片のようなものが色々出て来ました。

取れる限界まで卵材を回収して卵管を縫合します。

次に縫合した卵管を総排泄腔から中に戻します。

これで手術は終了です。

摘出した卵材の一部は下の通りです。

卵管内に蓄積する卵材は、卵黄・卵白・卵殻・卵殻膜等を原材料として、ゼリー状、液状、粘土状、砂状、結石状のものから完成形に近い卵状まで様々な形で存在するそうです。

この疾病は、犬猫で比較するならば子宮蓄膿症に匹敵するものです。

原因としては、卵材の異常分泌や卵材の排出不全が挙げられます。

この疾病に罹患した場合、何も処置せずに放置しておくと卵材が自然に吸収されることはなく、徐々に蓄積されていく傾向にあります。

長期にわたる卵材停滞の場合は、卵管炎から腹膜炎に至ることがあり、また卵材の慢性刺激により、卵管腫瘍が誘発されるケースもあります。

いずれにせよ、完治を目指すならば卵管の摘出がベストです。

今回のほたるちゃんの場合は全身状態も考慮して、開腹手術・卵管摘出手術は実施しませんでしたが、次に再発して全身状態が良好ならば、卵管摘出を考えるべきだと思います。

麻酔から覚醒したほたるちゃんです。

術後の覚醒も良好で、脱水を防ぐために水分補給と抗生剤を投薬してます。

今後の経過を注意して診ていきます。

翌日、ほたるちゃんは無事退院されました。

ほたるちゃん、お疲れ様でした。

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