フトアゴヒゲトカゲの腰椎骨折(代謝性骨疾患による)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日、ご紹介しますのはフトアゴヒゲトカゲの腰椎骨折です。
トカゲ類の脊椎骨折は哺乳類のそれと比較して難易度が高く、また予後不良のケースが多いです。
今回ご紹介するフトアゴヒゲトカゲのるかちゃん(性別不明、1歳)は腰のあたりがJの字に曲がり、まっすぐに歩行できないとのことで来院されました。
るかちゃんを真上から見ますとアルファベットのJの字に曲がっているのがお分かり頂けると思います。
まずはレントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色丸の部位に異常があります。
患部を拡大した写真です。
側臥の画像です。
腰椎がJの字に曲がっているのが黄色丸で記した部位です。
その拡大像(下写真黄色矢印)です。
レントゲンで診る限りでは腰椎が強い力で圧迫されて潰れ、そのまま仮骨で癒合したようです。
幸いにも、るかちゃんは腰椎損傷による神経症状は出ていないようです。
まだ年齢的にも1歳ぐらいとのことですから、幼体期における代謝性骨疾患が背景にあって腰椎骨折に至ったのではないかと思われます。
代謝性骨疾患については、爬虫類では人工飼育する上で深く関わってくる疾患です。
その詳細については、これまでに何度か記事に載せて来ました。
興味のある方はこちら(その1、その2、その3、その4, その5)をクリックして下さい。
代謝性骨疾患の発生機序や治療法にの詳細については、上記を参照して下さい。
トカゲ類は腰椎・股関節を支点にして尻尾を振りながら前進します。
尻尾の重さもそれなりにありますから、腰椎にかかる荷重は重いと言えます。
ゆずちゃんの場合は、腰椎に加えて尾椎も曲がっています(下写真黄色丸)。
代謝性骨疾患で骨密度が低下すると骨が機械的負荷に耐えられずに骨折に至る場合も珍しくはありません。
ゆずちゃんの場合は、腰椎が曲がって固まっていますから、頑張って前肢で前進しても左後肢が内旋するため、左回りに旋回することとなります。
結局、左半身に負荷がかかる分だけ疲れやすくなり、運動するのが辛い状態にあると思われます。
右前肢を伸ばし、左前肢を曲げる姿勢をとっています。
残念ながら、一度固まった骨を元に戻すことは出来ません。
飼育環境を見直す必要があり、フトアゴヒゲトカゲについては紫外線照射を確実に行って下さい。
成長期のフトアゴヒゲトカゲに必要なビタミンD類の血中濃度は、紫外線を一日あたり2時間照射しただけで維持されるとの報告があります。
その一方で、ビタミンD類のサプリメントの経口投与では、ビタミンD類の血中濃度はわずか18分の1しか上昇せず、成長期にあってはサプリメントだけでは不十分であるとされています。
現時点では、ゆずちゃんは紫外線照射と食餌管理で代謝性骨疾患を予防することが必要です。
幼体期の飼育管理で骨格は形成・安定しますので、くれぐれもご注意下さい。
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