こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、セキセイインコの腫瘍です。

セキセイインコをはじめとして、小型愛玩鳥にも腫瘍の発症は認められます。

今回の症例は、比較的腫瘍が短期間で腫瘍が大きくなり外科的に摘出した症例です。

セキセイインコのキィちゃん(8.5歳 雌)は、腰背部に腫瘤が発生して数か月の間に一挙に大きくなり、他院からの紹介で当院を受診されました。

下写真の黄色丸が腫瘤です。

診たところ、尾羽の付根の腰背部に位置する尾脂腺周辺から発生した大きな腫瘤のようです。

約2㎝以上の大きさがあります。

すでにキィちゃんは腫瘤が大きくなり、止まり木に停まるのにも苦労しているようです。

腫瘤の皮膚は自身で突っついたり、止まり木との干渉で裂けて出血が認められます。

本来ならば、ここで細胞診を実施して腫瘤がどんな細胞で形成されているのか確認したいところです。

キィちゃんは高齢であることから、細胞診検査(針穿刺)によるストレスでショック状態に陥る可能性もあるため、飼主様は速やかな外科的切除を希望されました。

鳥の場合は、体調が悪くても表面上は健常をつくろうため、本人の挙動・羽や嘴、皮膚の光沢・食欲・排便排尿の状態などから総合的に判断する必要があります。

全身状態は良好と判断し、外科的に摘出手術を実施することとしました。

ガスマスクにキィちゃんに入ってもらい、イソフルランによる麻酔導入を実施します。

麻酔導入出来たところで、マスクから出して維持麻酔に切り替えます。

下写真の黄色矢印は、腫瘤部の先端部が出血、壊死を起こしている部位を示します。

この腫瘤の付根を切断します。

硬性メスで皮膚に切開を加えます。

この腫瘤の発生部位が尾脂腺の頭側に位置していますので、腹部ヘルニアの様に消化管が腫瘤内部に入り込んでいることはありません。

しかし、太い栄養血管は走行している可能性はありますので慎重にアプローチしていきます。

血管の走行が確認できている部位は、電気メス(バイポーラ)で凝固切断します。

中心部にさらに太い血管がありましたので、バイクランプでシーリングを施します。

一滴の出血もなく、腫瘤を切除することが出来ました。

腫瘤の切断面です。

5‐0のナイロン糸で縫合します。

これで縫合は終了です。

全身麻酔から覚醒したばかりのキィちゃんです。

患部を保護するために、キィちゃんにはフェルト地のエリザベスカラーを装着しました。

本人はそれほどエリザベスカラーを気にすることはなさそうです。

キィちゃんは無事、翌日退院して頂きました。

術後、2週間ほど経過したところで、自宅でキィちゃんは縫合部を自主的に抜糸されたそうです。

下写真は、術後3週間経過した患部です。

縫合部は後も分からないくらい癒合出来ました。

術後の経過は良好で、止まり木にストレスなく停まることが出来るようになったキィちゃんです。

今回、摘出した腫瘤です。

切断面です。

腫瘤を剪刃で割を入れてみました。

割面は充実した組織が認められます。

病理検査を依頼し、下写真はその中等度の倍率像です。

ポリープ状の腫瘤は、主に脂肪組織の増殖により構成され、先端部は壊死を起こしていました。

高倍率の病理像です。

構成する脂肪細胞に異型性はなく、腫瘤内には羽包や尾脂腺の構造は認められませんでした。

結論として、今回のこの腫瘤は異型性に乏しい脂肪組織の増殖巣で構成された良性腫瘍の脂肪腫と判定されました。

病理医からは、完全切除とのことで良好な予後が期待されるとのコメントでした。

悪性の腫瘍でなくて良かったです。

キィちゃんにはもっと長生きして頑張って頂きたいと思います。

キィちゃん、お疲れ様でした!

 

 

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