こんにちは 院長の伊藤です。

犬猫同様にフェレットも尿石症に罹患します。

特に多いのが、リン酸アンモンマグネシウムから成るストルバイト尿石です。

顕微鏡で確認できる程度の小さな結晶ですが、結晶が合体して砂粒状になり尿道に降りてくる場合があります。

そうなると排尿障害を起こして、尿毒症から死に至る場合もあり要注意です。

本日、ご紹介させて頂きますのは ちゃちゃ丸 君(1.5歳、雄、体重1.4kg)です。

トイレで排尿しようとしているけど、できなくて辛そうに唸っているとのことで来院されました。

触診で下腹部を診ますと膀胱が尿で一杯になり、腫れあがっているのが分かります。

レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸の部位が膀胱を示しますが、尿が貯留しているのが分かります。

尿道にカテーテルを挿入して排尿させようとしましたが膀胱が尿で一杯のため、膀胱減圧をするために下腹部から皮膚を介して翼状針を穿刺して尿を吸引することにしました。

まずはちゃちゃ丸君を全身麻酔します。

エコーで膀胱穿刺している針の位置を確認しながら尿を吸引します。

下写真の黄色矢印は穿刺した針を示します。

穿刺した部位からの若干の出血が認められます。

最初ははっきりわかりませんでしたが、尿を吸引していくうちに膀胱底部に沈殿している尿石が白く現れて来ました(下写真黄色丸)。

吸引した尿は明らかな血尿でした。

吸引した尿はアルカリ性尿で細菌や剥離した膀胱上皮細胞、白血球を含んでいましたが、この時点では尿石の結晶は認められませんでした。

吸引できるかぎり尿を取り、尿道にカテーテルを挿入します。

今回は24Gの静脈カテーテル針を尿道カテーテルの代わりに挿入しました。

フェレットのペニスはJの字の形状をしており、陰茎骨があります。

非常に尿道は脆く裂けやすいので尿道カテーテルの挿入は気を使います。

生理食塩水をフラッシュして尿道及び膀胱を洗浄します。

生理食塩水でフラッシュを何度も繰り返していくうちに尿道から、下写真・黄色矢印の栓子(プラグ)が出て来ました。

下写真の様に膀胱・尿道から表面は粘稠性があって深部には硬い石が詰まっている栓子がいくつも出て来ました。

この栓子が出てきてから膀胱の洗浄は詰まりなく順調に出来るようになりました。

この栓子を顕微鏡で確認したところ、下写真のような結晶がしっかり詰まっていました。

ストルバイト結晶であることが判明しました。

膀胱洗浄後は、自力で排尿は可能と判断して、食餌療法と抗生剤・止血剤の内服をお願いしました。

フェレットの場合、ストルバイトは無菌性と感染誘発性の2種類があります。

多くは無菌性ストルバイトで、これは植物性蛋白を含む食餌、動物性蛋白含量の不十分な食餌を給与されているフェレットに認められます。

一方、今回のちゃちゃ丸君のケースにあたる感染誘発性ストルバイトですが、尿素分解酵素産生性微生物による感染で尿素を多量に含んだ尿がストルバイト尿石の形成を促進するものです。

ちゃちゃまる君の膀胱内にはまだ尿石は残存していますので、しばらくは猫用のストルバイトを溶解させる療法食を摂って頂き、膀胱内のストルバイト掃除をしていただきます。

ちゃちゃまる君、早く気持ちよくおしっこできるようになって下さいね。

 

 

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