ヒョウモントカゲモドキの口腔内膿瘍
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、ヒョウモントカゲモドキの口腔内膿瘍です。
口腔内膿瘍は根尖性歯周炎や辺縁性歯肉炎由来が多く、特に根尖性歯周炎から生じる骨膜膿瘍が大部分を占めるとされます。
ヒョウモントカゲモドキのきんかんちゃん(性別不明、体重49.3g)は過去に何度か他院で口腔内の膿瘍を取っており、今回も同様の症状で来院されました。
右顎関節周囲が腫脹しています(下写真黄色丸)。
レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色丸は右側上顎骨が一部骨融解しているのを示します。
きんかんちゃんの口を開けて口腔内を確認します。
右側の唇から歯肉辺縁部にかけて、膿や変性した口腔粘膜・歯肉が形成されています(下写真黄色丸)。
この変性した組織をピンセット、鉗子、綿棒を用いて掻破・摘出しました。
下写真はその摘出した組織です。
この組織内には歯は認められず、腐敗した口唇粘膜組織と歯肉です。
これらの組織を染色した顕微鏡組織です。
有核の赤血球やリンパ球そして細菌が認められます。
腐敗した組織を摘出した後の口腔内です。
黒矢印で示しているのは、腐敗組織が無くなり一部欠落、陥没した上顎骨を示します。
下写真の黄色矢印は側面から見た患部です。
広範囲に壊死組織が欠落しています。
口腔内の炎症はトカゲ類は比較的多く、特にマウスロットに代表される細菌性口内炎は生活習慣(食性)と関連して、慢性化する傾向があります。
数年にわたり、きんかんちゃんは口腔内膿瘍に悩まされているとのことで、今回患部の細菌検査を実施しました。
分離された菌は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)でした。
しかも12種類の抗生剤の薬剤感受性試験を行ったところ、アミカシンのみに感受性を持つ菌株であったことが判明しました。
いわゆる多剤耐性菌でありました。
アミカシンはアミノグリコシド系抗生剤で、緑膿菌等のグラム陰性桿菌に強い抗菌力を示します。
今後は、アミカシンの投薬で経過を診て行きます。
きんかんちゃん、お疲れ様でした!
にほんブログ村ランキングにエントリーしています。
宜しかったら、上記のバナーをクリックして頂けるとブログ更新の励みとなります。