フェレットの直腸脱(後編 ぺんね君救済計画)
こんにちは 院長の伊藤です。
先回、フェレットの直腸脱(前編 ぺんね君の受難)をブログに載せました。
今回はその続きで、ぺんね君の直腸脱を手術で治す内容となります。
フェレットのぺんね君(去勢済、2歳8か月)は直腸脱になり、脱出した直腸を戻して外肛門括約筋を縫合糸で絞り込んで、再脱出を防ぐ方法で対応しました。
しかしながら、2か月間で5回の再脱出を繰り返すことになりました。
ここまでが先回のブログ内容となります。
詳細はこちらをクリックして、ご覧下さい。
直腸脱4回目にして、肛門周囲を巾着縫合で絞り込み、何とか完治に持っていきたいと思っていたのもつかの間。
腹圧上昇に伴い直腸が、患部を突破して再脱出しました。
脱出している直腸の粘膜面(下写真黄色丸)も大きく腫大しています。
出血も伴い、このまま同じ処置を継続しても、回復の見込みは少ないと思われました。
そのため、外科的にしこりになっている直腸粘膜面を離断し、腸管を縫合して戻す方法を飼い主様に提案させて頂きました。
術式をイラストで表すと以下の通りです。
現時点でぺんね君の直腸は脱出し、粘膜は高度に炎症を起こしています。
脱出している直腸壁に支持糸を何ヶ所かにかけ、直腸を外に牽引します。
腫大している直腸粘膜面を離断します。
下のイラストは離断した直腸の断面です。
断面は二重に織り込まれているため、縫合糸で丁寧に縫い込んでいきます。
縫合が完了した時点で支持糸を離すと直腸は腹腔内に戻ります。
あとは縫合部が綺麗に吻合するのを待ちます。
飼い主様の了解を得て、早速外科的にアプローチをします。
ぺんね君の患部を洗浄消毒します。
脱出した直腸の拡大写真(黄色矢印)です。
ブログ前編時よりも腫大しています。
全身麻酔を施し、手術に移ります。
向かって右側が直腸のしこりです。
直腸壁に支持糸をかけて牽引したところ、直腸壁に裂け目が生じているのを確認しました。
この裂孔を縫合します。
直腸壁の縫合は完了です。
これから本題に入ります。
前述のイラスト通りにしこりの付根をメスで離断します。
離断すると直腸壁からの出血が認められます。
患部を洗浄します。
滅菌綿棒で患部を圧迫・止血してから直腸壁の縫合に移ります。
前述のイラストのように、直腸粘膜は2重に内反しているため、吸収性のモノフィラメント糸で細かく縫合します。
フェレットの直腸壁は犬に比べて薄いため、2重の内反している粘膜を縫い落とすと、後ほど腸管が狭窄します。
最悪、腸管に穴が開いた状態になりますので、糞便が腹腔内に漏出して腹膜炎になるため注意が必要です。
患部の縫合がしっかりできているのか、滅菌綿棒を腸管内に挿入して確認します。
綿棒が、腸管内である程度余裕をもって前後に可動できるか確認します。
下写真が腸管縫合の完成形です。
ここで支持糸を外します。
牽引力が無くなると腸管は腹腔内に戻ります。
これで手術は終了となります。
あとはぺんね君には安静にして頂き、消化に良い食餌を暫く摂ってもらうことになります。
手術翌日のぺんね君です。
表情もだいぶ良くなってます。
お尻の状態です。
私が一番うれしいのは、ちゃんと朝一番で排便がしっかりとできている点です。
入院中のぺんね君です。
フェレットバイトや高カロリー流動食も進んで口にしてます。
今回、離断した腫脹した直腸粘膜部です。
断面を見ますと高度に直腸粘膜が腫れているのが分かります。
断面をスタンプ染色しました。
粘膜上皮細胞に混じって、マクロファージ(黄色矢印)などの炎症細胞が遊走しています。
脱出反転した粘膜面が、床面との干渉で炎症を起こし、血行障害による浮腫を起こしていました。
結局、ぺんねは1週間ほどの入院となりましたが、術後の経過は良好です。
退院直前のぺんね君です。
退院1週間後のぺんね君です。
便通も問題なく、直腸脱になる前と同じ良好な排便が出来るようになっています。
お尻の状態です。
肛門周囲は炎症も治まり、綺麗になりました。
2か月余りの闘病生活でしたが、元気に回復されて良かったです。
ぺんね君、お疲れ様でした!
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