オカメインコの上腕骨骨折整復術(その2)
こんにちは 院長の伊藤です。
本日、ご紹介しますのはオカメインコの翼の骨折例です。
特にオカメインコの特徴として、突発的に興奮状態に陥りやすく、いわゆるオカメパニックと呼ばれる症状を起こしたりします。
オカメパニックを起こしているときに狭いケージの中であったり、部屋の中で放鳥しているときであったりしても、翼をぶつけて骨折に至るケースがあります。
翼の骨折は、肢の骨折に続いて多いですが、骨折整復した後のテーピングのストレスは一番鳥にかかると思われます。
過去にオカメインコの上腕骨骨折整復手術を載せていますので、興味のある方はこちらをクリックして参照下さい。
オカメインコのモモちゃん(8歳2か月齢、雌)は元気が無い、飛ばないとのことで来院されました。
左翼の下垂が認められます。
レントゲン撮影を実施しました。
下写真の黄色丸は左上腕骨の骨折部を示します。
骨折部は、黄色矢印が示す左上腕骨の遠位端(肘関節に近い側)の斜骨折です。
側臥の姿勢で、上腕骨が折れているのがお分かり頂けると思います。
結局、翼の骨折はしっかり整復して骨癒合しなければ鳥としての飛行は望めません。
ケージの中で飛行させることなく(骨折部の整復処置を行わない)、一生を送らせるのも飼主様の選択肢の一つです。
しかし、整復処置しなければ、翼は曲がったまま癒合し、日常生活に支障を来します。
放置したままなら、骨癒合不全に至り、羽ばたくごとに疼痛に苦しむでしょう。
飼い主様は再び飛行できるよう手術を希望されました。
モモちゃんはまだ全身麻酔に耐えられる状態のため、早速手術に取り掛かることになりました。
イソフルランで麻酔導入します。
ほぼ麻酔導入が出来上がったモモちゃんです。
左翼を広げたところです。
下写真黄色丸は、上腕骨の骨折端(斜めに折れている)が、皮膚を貫通して飛び出しています。
骨髄にピンを入れて整復固定する術式を選択しました。
以前、同様の術式の詳細を載せたブログがありますので、興味のある方はこちらを参照下さい。
骨髄ピン(直径1㎜)を上腕骨骨折端から上腕骨近位端(頭側側)へ向けて挿入します。
上腕骨大転子付近をピンで貫通させます(下写真黄色丸)。
そのままピンの遠位端側が骨折端に接触するまでピンの挿入(下写真黄色矢印)を進めます。
近位骨折端にピンが出ている所(黄色丸)です。
このピンの先端を白丸の骨折部遠位端に挿入します。
勿論、そのためには骨折部を整復する必要があります。
翼の上腕三頭筋をゆっくりストレッチングしながら骨折端の整復を行います。
実はこのステージが一番難しいです。
指先の感覚で整復できたか、確認します。
整復が出来たので、そのまま遠位端に向けてピン挿入を進めます。
下写真黄色丸は上腕骨遠位端に突出したピンです。
目視下で、この突出したピンを逆方向に戻して骨髄内に留めます。
次に上腕骨近位端に飛び出ているピンをペンチでカットします。
レントゲンでその模様を撮影しました。
上腕骨骨折の整復は完了です。
開放骨折した箇所は、皮膚が裂けていますので皮膚を縫合します。
最後に翼の羽ばたきをしばらく休ませるため、翼をテーピングします。
ボデイ・ラップ法と呼ばれる包帯法で、胴体と翼を固定します。
両翼端をテーピングしていますので、覚醒後左右のバランスを取るのが難しくなると思われます。
麻酔から覚醒したモモちゃんです。
翌日にはモモちゃんは経過良好で退院して頂きました。
その後、モモちゃんは自宅で療養となりましたが、テープを破壊したり、カットしたピンの端が少し突出したりのアクシデントはありました。
術後4週目にして、来院時のモモちゃんのレントゲン像です。
骨折端の骨癒合は良好でピンを抜去することとしました。
下写真の突出しているピンの端をピン抜去用鉗子で把持します。
ピンをゆっくりと引き抜いていきます。
ピンを安全に抜去完了です。
テープを外すことが出来て、モモちゃんはスッキリしたような表情です。
テーピングは鳥にとって、大変なストレスです。
4週間近く、モモちゃんの介護にあたった飼い主様の愛情はすばらしいと思います。
ピン抜去後2週間後に来院したモモちゃんです。
自宅で飛行も出来るようになったとのことです。
モモちゃん、お疲れ様でした!
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