こんにちは 院長の伊藤です。

暑さのためか下痢・嘔吐を起こして来院される鳥が多いです。

本日は、愛鳥家の方々から質問を受ける機会の多いメガバクテリア感染症についてコメントさせて頂きます。

オカメインコのチョビちゃん(2か月齢、性別不明)はこの数日、食欲低下とのことで来院されました。

下写真は、プラスチックの水槽に入れられて来院されたチョビちゃんです。

よくよく見ますと、水槽壁に嘔吐物が付着しているのが分かります(上写真緑丸)。

便も下痢便を呈しており、まずは検便を行いました。

下写真の中で黄色丸で囲んだ菌にご注目下さい。

他の腸内細菌に比べ、菌体が大きく一目でわかる大型桿状の微生物です。

この菌は通称メガバクテリアと呼ばれ、以前は同定が困難で未分類となっていたものです。

近年、この微生物は核を持ち、真菌に類似した細胞壁もあり、その細胞壁には真核生物特有のキチンを含んでいる点、リボゾームRNA を持ている点から真菌であることが立証されました。

上写真の拡大像です。

メガバクテリアは大型の棍棒状の酵母ですが、菌体の長さや細胞壁の暑さは一定ではなく様々な形態が認められるそうです。

メガバクテリアは鳥の胃の中に住んでいるためAGY(Avian Gastric Yeast)とも呼ばれ、メガバクテリア感染症をAGY症もしくはマクロラブダス症とも呼ばれています。

メガバクテリアは強い病原性を示す感染症であり、本邦ではセキセイインコに蔓延しているとの報告があります。

他の鳥種にはコザクラインコ、ボタンインコ、オカメインコ、ブンチョウ等の感染が認められています。

軽微な感染では無症状です。

胃炎が引き起こされると嘔吐、粒便といった胃炎症状が見られます。

診断は、糞便の直接塗沫でメガバクテリア検出の有無で実施します。

糞便への排泄量と症状の強さとは必ずしも比例関係はないとのことです。

チョビちゃんの場合、このメガバクテリアが検出され、嘔吐の症状も認められますので治療が必要です。

治療には、アンホテリシンBという抗真菌薬の内服を行います。

メガバクテリアは胃粘膜内に深く侵入し、糞便中に検出されなくなっても、胃粘膜内に長い期間残存すると言われます。

そのため、検便で陰性になった後も1か月位は投薬が必要です。

幼鳥期の感染がほとんどですが、早期発見・早期治療で回復します。

親鳥が幼鳥に給餌する際に、吐き戻した食物中のメガバクテリアを幼鳥が摂取することで感染が成立します。

成鳥の感染例では、胃の障害が強い点と治癒後も慢性的な嘔吐が認められる点が特徴です。

幼鳥で食欲不振・嘔吐が頻発する場合、このメガバクテリア感染症の可能性がありますから早めの受診をお勧めします。

 

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