ハリネズミの脱髄性麻痺(ふらつき症候群)
こんにちは 院長の伊藤です。
今回ご紹介するのは、ハリネズミの疾病の中で神経系の致死率が高いとされているものです。
脱髄性麻痺(Wobby Hedgehog Syndrome)、別名ハリネズミのふらつき症候群です。
この疾病の症状は、最初に後肢に不全麻痺が生じ、ふらついているようになります。
次いで四肢に力が入らなくなり、やがて筋肉の委縮を伴い悪化していきます。
最終的には自分で採食できなくなり、排尿・排便が困難になり死亡します。
ハリネズミのチャコちゃん(4歳、雌)は後躯麻痺で来院されました。
後肢に力が入らず、指先がナックリングしてうまく前進できません。
前肢のみで匍匐前進するような感じです。
当初、脊椎損傷の疑いでレントゲン撮影を実施しました。
脊椎骨の骨折・脱臼・変形など、特に異常とおぼしき所見はありません。
ただ脊椎造影したわけではなく、単純レントゲン撮影のみですから残念ながら詳細は不明です。
まずはステロイド療法を実施することとしました。
このあと3週間ほどは経過が良くなりましたが、再度後躯麻痺が起こりました。
残念ながら数日でチャコちゃんはお亡くなりになりました。
今回、外傷による脊椎疾患が原因かは明確ではありません。
脱髄性麻痺は何が原因かは、まだ分かってません。
栄養不良やカルシウム・ビタミン不足、遺伝性などと推察されているものの、原因不明です。
原因不明のため、治療法も確立されていません。
ストレスの少ない生活環境を作って、飼主様がハリネズミの介護を施していかなくてはなりません。
この脱髄性麻痺は、ハリネズミの死後病理検査によって、神経線維を包む鞘(さや)が破壊されるのを認めて、初めて確定診断されます。
チャコちゃんは病理解剖をしておりませんので、はたしてこの脱髄性麻痺なのか否か不明です。
ただ臨床症状と経過をみると脱髄性麻痺の可能性が高いように思います。
ハリネズミはペットとしての歴史が浅く、まだまだ分かっていない疾病は多いと思います。
少しでも、新たな治療につながるように努力していきたいです。