犬の子宮腺筋症
こんにちは 院長の伊藤です。
今回ご紹介しますのは、犬の子宮腺筋症です。
一般的には犬の避妊手術を実施する際に、多くの病院は術前に血液検査や患者の症状によってはエコーやレントゲン検査等実施すると思われます。
それでも一般症状は特に問題なく、現場で開腹してみたら子宮に病変が認められたケースもあります。
本日はそんな症例となります。
チワワのヒナちゃん(雌、10歳6か月齢、体重4.5kg)は当初、乳腺炎で当院にて治療を受けられてました。
2週間でヒナちゃんの症状が落ち着いたため、避妊手術を飼主様がご希望されました。
避妊手術をしていない場合、7・8歳以降のシニア世代になると乳腺腫瘍、子宮蓄膿症の発症率が一挙に上がります。
その点を飼主様も懸念され、一般の避妊手術を実施することとなりました。
ヒナちゃんの術前の血液検査も異常は認められません。
一般の避妊手術の流れで進めて行きます。
腹筋を切開したところ、腫大した子宮が飛び出て来ました。
問題はこの子宮外側面が凸凹の形状をしている点です。
触診の限りではいかにも腫瘍であろうという感じがします。
子宮漿膜面(外側面)が腹側も背側も小さな腫瘤が沢山形成されています。
バイクランプで卵巣動静脈をシーリングします。
メスでシーリングした動静脈を切っていきます。
ヒナちゃんの体から比較して子宮は腫大しているのがお分かり頂けると思います。
子宮以外に他の腹腔内臓器に腫瘍病変がないか調べましたが、特に異常な所見は認められませんでした。
皮膚縫合が終了したところです。
麻酔から覚醒したヒナちゃんです。
特に平常時の避妊手術の流れで終了しました。
改めて摘出した子宮です。
子宮内の筋肉層から腫瘤が盛り上がっている感じです。
病理検査に出して専門医の診断を待ちます。
元気に退院されたヒナちゃんです。
2週間後の抜糸の時も非常に元気で経過は良好とのことでした。
1週間ほどで病理検査結果が出ました。
診断は子宮腺筋症及び子宮内膜過形成とのことでした。
下写真は低倍率の子宮の画像です。
子宮平滑筋層に多くの過形成された子宮腺が形成されています。
この病態を子宮腺筋症といいます。
下写真は高倍率の過形成された子宮腺です。
子宮内腔や過形性腺管腔には好酸性の液体が貯留しています。
避妊しないと過剰あるいは長期にわたるエストロゲンやプロゲステロンによる子宮内膜のの刺激が原因で子宮内膜過形成が起こります。
その結果、今回の様に子宮腺や子宮内腔に漿液が貯留します。
この状態の合併症として続発性細菌性子宮内膜炎や子宮蓄膿症が起こります。
腺筋症の子宮を漿膜面から観察した場合、腫瘤状・数珠状に見え子宮平滑筋系腫瘍との鑑別が困難となるそうです。
今回、病理検査に出して結果、子宮の腫瘍でなかったのが判明して良かったと思います。
いずれにせよ、避妊手術は最初の発情を迎える前に実施することが、シニアになって産科系疾患を回避する近道と言えます。
ヒナちゃん、お疲れ様でした。
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