こんにちは 院長の伊藤です。

一般にトイ種と呼ばれる小型犬種では、日常的に前腕部骨折に遭遇します。

今回は、トイプードル骨折とも呼ばれる橈尺骨骨折の症例をご紹介します。

体重が1.7kg足らずで今年1歳になるルルちゃんは飛び降りが原因で橈尺骨を骨折してしまいました。

レントゲン上で橈尺骨遠位端の骨折がお分かり頂けると思います。

ルルちゃんの橈骨は幅が6㎜で厚さが3~4㎜と非常に薄く脆い骨質です。

骨折の整復に当たり、プレートによる内固定を選択しました。

骨折端が手首の関節(手根関節)に近いため普通のプレートでなく、T字型のプレートを使用することとしました。

下の写真にあるタイプです。橈骨固定に必要な分をカットして使用します。

早速、手術に移ります。

骨折端を含めて、皮膚及び皮下組織、筋膜と切開していきます。

骨折部をプレート用骨保持鉗子で固定します。

レントゲンではこんな感じです。

T字プレートを適切な長さにカットして骨折部にあてます。

骨スクリューを入れるための1.5㎜のネジ穴をドリルで作ります。

橈骨遠位端骨折の場合はどうしても手根関節近くをアプローチするため、靭帯やら動脈やら細かく選り分けてのプレート装着のため、とても気を使います。

プレート固定も何とか無事終わり、レントゲンで確認しました。

10日ほど入院して頂き、無事ルルちゃんは退院されました。

暫くはスプリント固定の生活が続きますが、頑張って頂きます!

トイ犬種の橈骨骨折の癒合が遅い原因は、犬自体が活動的で落ち着きがなく、骨折部が不安定である点です。

また橈骨骨髄腔が非常に狭く、骨幹部から骨端部の血管密度が低いためとも言われています。

橈骨骨折の手術を受けても骨癒合不全に陥るケースも多いです。

まずはトイ犬種を飼われている飼主様は、犬を落とさない! 踏みつけない!ことをくれぐれもご注意ください。

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