チンチラの膀胱結石
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介するのは、チンチラの膀胱結石摘出の症例です。
以前に膀胱結石が尿道まで降りてきて摘出した症例を載せました。
その症例に興味ある方はこちらをクリックして下さい。
チンチラのマチルダ君(雄、9歳、体重700g)は最近、血尿が出るため来院されました。
排尿時の疼痛感も伴っているようです。
まずは、レントゲン撮影を実施しました。
上のレントゲン写真の黄色丸は膀胱内の結石を表しています。
結石の大きさは直径が6㎜あります。
おそらくこの結石が原因で排尿時の疼痛や血尿などの症状が引き起こされてます。
膀胱結石が原因で排尿障害になりますとチンチラの場合は重篤な状態に陥るケースが多いように思います。
飼い主様の了解を得て、膀胱結石摘出手術を実施することとなりました。
麻酔導入箱にマチルダ君に入ってもらい、イソフルランで麻酔導入を行います。
麻酔導入が完了したところです。
麻酔導入箱から出てもらい、ガスマスクで維持麻酔に切り替えます。
術野を剃毛し、消毒します。
マチルダ君の麻酔状態も安定してきたところで手術を開始します。
開腹のためにメスで切皮します。
腹筋を切開します。
チンチラの臓器は非常に脆いので、極力指先で弄り回さずに滅菌綿棒で体外に出します。
下写真の中央部が膀胱です。
膀胱を牽引して支持するための支持糸を膀胱の先端部にかけます。
下写真は膀胱尖部に支持糸をかけ、牽引しているところです。
膀胱の腹側面を露出しており、ここからメスで膀胱壁を切開します。
№11のメスの先端部で膀胱に切開を入れます。
既に指先には硬い結石の存在を触知しています。
膀胱の漿膜面から切開し、粘膜面まで割を入れます。
下写真の黄色矢印は膀胱結石を示しています。
膀胱粘膜を傷つけないように結石を摘出します。
マチルダ君の膀胱と比べても大きく感じるサイズの結石です。
膀胱内部を生理食塩水でしっかり洗浄し、5‐0のモノフィラメント吸収糸で膀胱壁を縫合します。
チンチラの場合は膀胱自体が小さいため、犬猫に適用するような二重内反縫合法は行いません。
単層の単純結紮縫合法で対応します。
約2㎜間隔で縫合していきます。
縫合部がしっかり縫合できているか確認するためにリーク試験(漏出試験)を最後に行います。
これは、生理食塩水を注射器で膀胱内に注入し、縫合部から生食が漏れていないかを見ます。
下写真黄色矢印から生食が一部漏出しているようなので、この部位に縫合を追加することとしました。
再度漏出試験を実施し、漏れがないことを確認しました。
膀胱を腹腔内に戻し閉腹します。
腹筋を縫合したところです。
最後に皮膚を縫合します。
皮膚縫合完了です。
手術は完了しました。
後は麻酔を切り、マチルダ君の覚醒を待ちます。
皮下にリンゲル液を輸液してます。
麻酔から覚醒してきたマチルダ君です。
手術翌日のマチルダ君です。
エリザベスカラーはストレスの原因となりますが、2週間は頑張って装着して頂きます。
食欲もあり、排尿も出来ています。
特に問題なくマチルダ君は術後2日目に退院して頂きました。
下写真は摘出した膀胱結石です。
炭酸カルシウムの膀胱結石でした。
チンチラにおいては、食餌から摂取した過剰なカルシウムは殆どが糞便から排泄されるとされています。
一方、尿から排泄されるカルシウムも一定量に維持されるとされます。
結果、高カルシウムの食餌が膀胱結石の誘因とはならないと考えられています。
ならば、膀胱結石の原因はどこにあるのか、遺伝的要因なのか、あるいは他の要因が関連しているのか、今のところ不明です。
2週間後に抜糸に来院されたところです。
抜糸も問題なく終了しました。
退院後は血尿もなく、排尿もスムーズに出来ているとのことです。
マチルダ君、お疲れ様でした!
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