こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのは、コールダックの卵塞(たまごづまり)です。

コールダックは、マガモを品種改良したアヒルを,さらに品種改良して出来た鳥です。

アヒルと比べると4分の1の大きさ(体重600~1000g)で,世界最小のアヒルといわれています。

品種改良された当初は,野生のカモをつかまえるために鳴き声で知らせるおとりとして使われていましたが,今では観賞用やペットとして飼育されています。

そんな背景のあるコールダックですが、他の愛玩鳥同様に卵塞になったりします。

コールダックのしょうこちゃん(8か月齢、雌、体重1.0㎏)は数日前から元気・食欲がないとのことで来院されました。

産卵する姿勢をしても卵は出ず、下腹部が張ってるとのことです。

しょうこちゃんはまだ産卵歴はなく、あるとしたら今回が初産に当たるそうです。

レントゲン撮影を実施しました。

下写真黄色矢印は卵を示します。

卵は2個認められます。

しょうこちゃんは卵塞になってるようです。

最初の卵が総排泄腔の軸線から見て垂直に立っているため、物理的にも産卵は厳しい状態です。

触診しますと総排泄腔の手前に既に卵はありますので、圧迫して卵を排出処置を試みることとしました。

比較的小柄な水禽類とはいえ、助手にしっかり保定してもらい後方(総排泄腔側)からアプローチします。

私の右手の親指と人差し指に卵の感触が触知されます。

卵塞には正常な卵管通過時間が経過しても停滞している卵停滞と卵管口が広がらないために産卵できない難産とあります。

指先の圧迫で卵管口を拡張できるか、時間をかけて圧迫していきます。

圧迫により、しょうこちゃんが息み出しました。

息みに合わせて、圧迫を加えて行きます。

卵管口は少しづつ弛緩しており、圧迫法で卵の排出は出来そうです。

卵は膣部へと移動し始めました。

排泄孔が拡張してます。

卵はもう排出直前です。

卵の排出完了しました。

総排泄腔粘膜が戻るのを確認しました。

2個目の卵がそのまま卵管口まで下降してくれると良いのですが、まだ卵管内に存在しています。

この状態で、卵圧迫排出法を継続するのは、他の臓器(腸・尿管など)を傷つけますので中止しました。

自然の産卵を促すため、グルコン酸カルシウムを100㎎/kgを筋肉注射(大胸筋)することとしました。

子宮部の収縮を促すための急激な血中濃度の上昇を期待して、カルシウム剤を投与します。

最初の卵は難産で、この卵が卵管を閉塞させていたために第2弾目の卵が卵停滞になっている可能性もあります。

既に恥骨は十分開いているため、第2弾の卵は低カルシウム血症を原因とする卵塞に陥っていると思われます。

グルコン酸カルシウムが効果を奏すれば、第2弾の産卵も成功すると期待します。

しょうこちゃんは、最初の卵が産卵できたこともあり、多少元気が出てきた模様です。

産卵した卵を割ってみました。

卵殻が薄い(黄色矢印)のがお分かり頂けると思います。

卵管内でのカルシウム分泌量が少ないため、卵殻は非薄で卵塞に陥ったものと考えます。

自宅に帰られて飼主様から電話を頂きました。

帰宅後間もなく、しょうこちゃんは2個目の産卵を自力で出来たとのことでした。

今後、産卵時に卵塞に陥らないように栄養学的バランスと飼育環境に気を付けて頂きたいと思います。

しょうこちゃん、お疲れ様でした!

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