キバタンの脛骨骨折
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのはオウムの仲間のキバタンという愛玩鳥です。
キバタンの中でも目の周りのアイリング(眼の周囲の毛のない部位)が青いキバタンをアオメキバタンと呼びます。
キバタンはオーストラリアやニューギニア原産で体重400g~880g、体長44~50cmとされます。
平均寿命は50~70年と非常に長寿の鳥です。
アオメキバタンのシュガーちゃん(性別不明、2歳、体重550g)は左肢を拳上しているとのことで来院されました。
早速、レントゲン撮影を実施しました。
脛骨の中央部が斜骨折しているのが判明しました。
体重のある鳥なのでシンプルなギブス固定では骨癒合まで持っていくのは困難と思われます。
骨髄ピンによる固定法を選択することとしました。
斜骨折している骨折端が皮膚を貫通して骨髄炎までなると大変です。
急遽、手術となりました。
イソフルランでマスクによる導入麻酔をします。
シュガーちゃんはおとなしく、思いのほかスムーズに麻酔導入は遂行できました。
このまま維持麻酔をします。
左肢が外転してブラブラになっています。
皮膚をメスで切開して、骨折部にアプローチします。
筋肉層を鉗子で分離します。
下写真の黄色矢印は骨折端を示します。
斜骨折していますので、骨折端は下写真のように鋭い形状です。
遠位骨折端より踝に向けてピンを骨髄に挿入します。
キバタンの骨髄腔は広く、直径1㎜の骨髄ピンを使用しました。
ピンが踝を貫通しているのがお分かり頂けると思います。
ピンを完全に踝から突出させて、逆方向にドリルのピン装着します。
今度はピン(両端が鋭利なタイプ)の反対側を骨折端の近位部に向けて挿入します。
ピンが骨折部に顔を覗かせています。
ココで骨折部を固定して鉗子で整復します。
ピンを骨折部から脛骨近位端へ向けて挿入します。
ピンの先端が皮膚を穿孔して突出しています。
ここで確認のためレントゲン撮影をします。
骨髄にピンはしっかり入っています。
ここで骨折部の整復がしっかり出来ているかを確認します。
問題がないのを確認後、踝に突出しているピンをペンチで離断します。
次いで、脛骨近位端(膝関節部)に突出しているピンの先端をペンチで同じく離断します。
骨折部を露出するために分離した筋膜を縫合します。
筋膜縫合完了です。
次いで皮膚を縫合します。
これで手術は終了となります。
最終のレントゲンチェックです。
骨折した左肢は牽引すると正常な右肢と平行にまっすぐに伸展します。
骨折により骨髄や周囲組織が破たんして出血があり、患肢が内出血で黒ずんでいるのが分かります。
術後の管理で最も重要なのは、キバタンは咬む力が強いため患部を自傷しないようガードする必要があります。
まずは患部をテーピングします。
テーピングはこれで完了です。
シュガーちゃんがまだ麻酔から覚醒しない間にエリザベスカラーを装着します。
麻酔から覚醒したところです。
麻酔から完全に覚醒して初めて手術は無事終わったと実感します。
翌日のシュガーちゃんです。
装着したエリザベスカラーは見事に破壊されました。
元気なのは良いことです。
念のため二重にカラーを装着しました。
この状態でも食餌はしっかり食べることが出来ます。
シュガーちゃんは手術後2日目に退院されました。
下写真は術後1週間のシュガーちゃんです。
患肢への荷重も、ある程度抵抗なくできるようになりました。
飼い主様に甘えているシュガーちゃんです。
今後は、骨髄ピンを抜去するタイミングを経過観察していきます。
中型から大型の鳥の骨折はセキセイインコやオカメインコとは異なり、小型犬に近い感覚が必要になります。
特に長寿な鳥種ほど、手術は気を使います。
シュガーちゃん、お疲れ様でした!
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