こんにちは 院長の伊藤です。

皆様はイカリムシという魚類や両生類に寄生体をご存知でしょうか?

本日、ご紹介させて頂きますのは、このイカリムシの感染したウーパールーパーのウーちゃんの症例です。

ウーちゃんの鰓(エラ)や体表部に白い棘のようなもの(イカリムシ)が現れたとのことで来院されました。

下写真のどこにこの寄生虫がいるか、お分かりでしょうか?

答えは黄色丸で囲んだ箇所にイカリムシが寄生しています。

側面の画像です。

イカリムシは下写真の黄色丸に存在しています。

イカリムシのイカリは、船の碇(イカリ)を指して呼びます。

一度身体に刺さると外れにくい形状を先端部がしている点から、イカリムシと呼ばれるようになったそうです。

魚を初め、両生類にも寄生するため、駆除が非常に大変です。

下写真は、今回摘出したイカリムシです。

黄色矢印はV字体の卵嚢です。

上のイカリムシを顕微鏡で撮影、拡大したのが下写真です。



上段写真:卵が詰まった卵嚢です。(黄色矢印)

中断写真:消化管(黄色矢印)

下段写真:口器(黄色丸)

イカリムシはどこから現れるのか?

ほとんどのイカリムシは外部からの持ち込みです。

水草であったり、餌としての金魚であったりします。

イカリムシの成虫は一度に300から500の卵を産卵します。

その寿命は2か月で15回ほどの産卵をします。

ウーちゃんには80匹以上のイカリムシが寄生(黄色丸)していました。

結局、イカリムシの駆除は一匹ずつ鉗子で抜いていくしかありません。

血液が集まる部位が好きなようで、鰓に一番集まっています。

鉗子で抜く時、気を付けないと簡単に出血を起こします(下写真)。

ウーちゃんの場合は、口の中にまでイカリムシが寄生していました。

内股にも寄生しています。

摘出したイカリムシの一部です。

イカリムシを体表部から摘出した直後は、出血もありウーちゃんは軽い虚脱状態になりました。

イカリムシ摘出後には、寄生されていた皮膚が発赤、内出血を起こしてます。

さて、このイカリムシ感染によるウーパールーパーの治療法です。

まず、取り残しのないように確実にイカリムシを摘出します。

寄生していた部位はエロモナス等の水棲細菌に汚染しますので、消毒が必要となります。

下写真はイカリムシ感染で潰瘍に至った皮膚をメチレンブルーとアクリノールの合剤で傷口を消毒しているところです。

個体の全身状態によって、薬浴を実施するかは判断します。

一般的には、ウーパールーパーは薬剤に弱いため、局所的な消毒で対処するケースが多いです。

水槽はイカリムシの卵や幼体で汚染されていますので、完全に消毒したつもりでもダメで水槽を新調する(リセットと言います)必要があります。

魚類のイカリムシ治療でリフィッシュ(トリクロルホン)を使用される方がみえますが、幼体のみにしか効果はありません。

むしろ毎日、水槽の水を新鮮な水と交換することで卵と幼体の絶対数を減らしていく方が安全です。

2か月ほど経過を観察して、イカリムシが出現しなくなれば治療は成功です。

治療後のウーちゃんの経過も良好で、食欲も増えてきて良く動けるようになってきました。

再診時のウーちゃんです。

寄生虫なる生物は内部寄生であれ、外部寄生であれ、巧妙に宿主の生活に、寄生虫自身のライフサイクルを組み込んで自己増殖していきます。

今回のウーちゃんはイカリムシの高度寄生例でした。

まだウーちゃんは成体で基礎体力もあり、感染に飼主様が気づかれてから来院まで速やかであったため、生還できました。

鰓に大量に寄生した場合、一挙にイカリムシを摘出しますと多量の出血でショック状態に陥ますので、細心の注意が必要です。

くれぐれも外部からの餌なり、水草を水槽に導入する際は、お気を付け下さい!

 
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