エボシカメレオンの直腸脱と卵塞
こんにちは 院長の伊藤です。
本日ご紹介しますのは、カメレオンの卵塞(卵づまり)とそれに伴う直腸脱の症例です。
カメレオンも性的に発情し、交尾、産卵、孵化というプロセスをたどって繁殖をします。
性的成熟と交尾のタイミングも難しいのですが、産卵については他の爬虫類と同様、卵塞(卵づまり)が命に関わる場合があります。
今回は卵塞が背景にあり、直腸脱に至った症例です。
エボシカメレオンのキョロちゃん(2歳8か月、雌)はお尻から何か飛び出し、元気食欲がないとのことで、三重県から来院されました。
下写真のキョロちゃんは眼が窪んでおり、脱水が進行しているのが伺えます。
総排泄腔を確認したところ、直腸脱(下写真黄色丸)が認められました。
脱出した直腸粘膜にまだ傷はなく、整復は可能と思われました。
まず脱出直腸を綺麗に洗浄します。
洗浄後に患部にブドウ糖液を滴下します。
これは浸透圧差によって、浮腫により腫大した直腸粘膜の水を抜くために行います。
加えて、脱出直腸の滑りを良くするために流動パラフィンを患部に塗布します。
綿棒を用いて、優しく直腸を整復して行きます。
何本か、綿棒を用いて整復をしていきますが、脱出直腸は脆弱のため、なるべく出血をさせないよう配慮が必要です。
直腸が戻ったら、次は再脱出を防ぐために総排泄口周りの皮膚を何針かで縫合します。
左側2針、右側1針を縫合しました。
この総排泄行の幅で排便ができれば大丈夫です。
脱出直腸は整復しましたが、キョロちゃんの腹部は大きく膨隆しています。
下写真の黄色矢印は腫れた下腹部を表します。
念のため、レントゲン撮影を実施しました。
かなりの数の卵が腹腔内に認められます。
現在、抱卵(妊娠)状態にあるようです。
産気付いてくると腹圧をかけ始めますので、それが直腸脱の原因になったものと考えられます。
一旦、直腸脱の整復処置は終了しましたのでキョロちゃんには帰宅して頂きました。
5日後に飼主様から、キョロちゃんが無事産卵したとの電話を頂きました。
エボシカメレオンの場合、抱卵(妊娠)期間は30~40日間とされます。
産卵数は国内の報告では20~80個、孵卵期間は6~9か月と報告されてます。
キョロちゃんの産卵数は62個あったそうです。
総排泄口の縫合糸は、飼主様に切ってもらいました。
その後の再脱出もなく、無事今回の件は治療終了しました。
産卵がスムーズに出来なければ、最終的に卵管ごと摘出する必要があります。
カメレオンのように産卵数の多い爬虫類の卵塞は大変ですね。
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