こんにちは 院長の伊藤です。

本日ご紹介しますのはハムスターの外傷性口蓋裂です。

上顎の口腔内の硬口蓋という凸凹した部位が、先天的に閉鎖せずに鼻腔と通じている状態を口蓋裂と言います。

犬や猫で交通事故や落下事故で上顎骨折に伴って生じる口蓋裂を外傷性口蓋裂と言います。

キンクマハムスターのシシ丸ちゃん(10か月齢、雌)は、口の中で食餌を詰まらせていたため、飼主様が取ろうとしたところ鼻血が出たとのことで来院されました。

口腔内を確認したところ、硬口蓋に亀裂が入っています(下写真黄色丸)。

シシ丸ちゃんは先天的に口蓋裂を持っていたのか、それとも外傷性口蓋裂に今回なってしまったのか、それは良くわかりません。

そのため、レントゲン写真を撮りました。

伏せの状態で取ったレントゲンに、上顎部の骨折が疑われる所見が認められました(下写真黄色矢印)。

恐らくは、シシ丸ちゃんが食餌を取られたくなくて暴れた際に上顎が骨折して、口蓋裂が生じたのではないかと思われました。

つまり、外傷性口蓋裂であろうと推察されました。

いづれにせよ、このままでは食べた食餌が鼻腔に迷入して誤嚥を来し、最悪肺炎に至る可能性もあります。

口蓋裂を矯正する手術を実施することとしました。

また上顎部の骨折については、小さい動物のため特に固定することはせずに経過観察を行います。

全身麻酔を行います。

麻酔導入が効いたところで仰向けに寝てもらい、開口姿勢をとってもらいます。

よく観察しますとこの口蓋裂は幅も広く縦に長く開いているのがお分かり頂けると思います(下写真黄色矢印)。

口蓋裂の患部は、若干出血が認められます。

ハムスターの口腔内は非常に狭いため、皆様に見やすいアングルで写真撮影できませんでした。

シシ丸ちゃんの口蓋裂を5-0の縫合糸で縫い込んでいきます。

口蓋裂を縫合完了しました。

最後に皮下にリンゲル液を輸液して終了です。

麻酔覚醒後のシシ丸ちゃんです。

手術後16日目に抜糸のためシシ丸ちゃんは来院されました。

患部はどうなっているでしょうか?

口蓋裂は綺麗に閉鎖されています。

外傷性口蓋裂の手術は無事、終了出来ました。

シシ丸ちゃんの下顎の切歯は過長傾向にあります。

その一方で上顎の切歯は非常に未成熟で小さく短いと言えます。

上下の切歯の咬みあわせが不整咬合です。

上顎切歯に下顎切歯がまっすぐに当たってないため、下顎切歯は摩耗することなく伸びすぎてしまうわけです。

今回の外傷性口蓋裂にしても、伸びすぎた下顎切歯が硬口蓋に当たって生じた可能性もあるかもしれません。

シシ丸ちゃんは、今後もこの切歯不整咬合の調整のため、定期的に切歯カットが必要とされます。

専用ニッパーで切歯をカットすることとしました。

最低でもこれくらい下顎切歯をカットしないと上顎硬口蓋に当たってしまいます。

これで治療は終了しました。

シシ丸ちゃん、お疲れ様でした!

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